horahuki

ファイブ・バンボーレのhorahukiのレビュー・感想・評価

ファイブ・バンボーレ(1970年製作の映画)
4.1
祝!『バンパイアの惑星』レンタル開始!

本作とは関係ないのですが、マリオバーヴァの傑作SFホラー『バンパイアの惑星』が9月6日からレンタル開始のようです。この調子で他のレンタルないやつも頑張ってほしいですね^_^

本作のあらすじ…
舞台はリゾート島。工業用樹脂の研究を完成させた教授とその研究を狙う資産家の男たち3人。そしてそれぞれの妻たち。大金を生み出す研究を巡った思惑入り乱れる中で発見されるハウスボーイの死体。それを皮切りに一人ずつ消されていき、疑心暗鬼で誰もが互いを信じられなくなり崩壊していく様を描いたシュールなサスペンスコメディ。

大好きなマリオバーヴァ監督の後期の作品。傑作『血みどろの入江』と同年だし、ジャーロなのかと思ってましたが、特にジャーロ要素のないサスペンスでした。でも、何から何までとにかくシュールで、『血みどろの入江』のような「なんじゃそりゃ!?」となってしまうこと間違いなしな笑えるラストまで見せつけてくれる楽しい作品でした。

プロローグのお遊びからしてセンスの塊なのが流石のバーヴァといったところですね。資産家が女を縛り付けにして、その場の全員にナイフを配る。「処女をクラール神に捧げるのだ」的なカルトなことを言いつつ、みんなで女を拷問した後に殺して楽しむヤベェパーティが始まるんかと思わせるトーチャーポルノみたいな始まりを見せつつも、突然電気が消灯。再び点灯した時には女の胸に刺さってるナイフ。「誰が殺した?これは誰が持っていたナイフだ?」的な緊迫感とともに全員の目線の動きを捉える『モデル連続殺人』のような演出でテンション上がりました。

終盤あたりまでは誰が犯人なのかを巡るフーダニットな感じで、物語的には普通なサスペンスではあるのですが、とにかく見せ方がシュールなんです。バーヴァに渡された脚本が相当酷かったらしく、書き直しも出来ずに撮ったようですが、『ロイ・コルト&ウィンチェスター・ジャック』のように監督として作品を魅力たっぷりに仕上げる力量がズバ抜けてるなというのを実感。

今作では意図的なシュールさが、資産家の内面を解体していくような役割を果たしていて、形作られた外枠を少しずつ剥がした先にある資産家の生々しい心の空虚さや行き着く先の滑稽さを直接的にではなく、あくまで作品の纏う雰囲気によって間接的に浮かび上がらせるように描いているように感じました。ブニュエルの『この庭に死す』や『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』を見た時に感じたものと非常に近い。彼らの身の回りの世話をするハウスボーイが真っ先に退場するということから既に意味深ですね。

そして残り3人まで人数が減った後のピリピリとした場の空気感がたまらないです。画面の奥行きを広く取り、手前・中間・奥にそれぞれ違った情報を配置する構図に痺れたし、目線の動きで疑心暗鬼な心境を表現したり、「オカルトなの?SFなの?」と一瞬思わせるようなぶっ飛び方も大好き。

『カメ止め』のカメラマンの人も喜びそうな、ふざけてんのかなと思ってしまうほどの小刻みなズームイン・アウトの連続のダサカッコ良さとか、網目状の衝立を挟んだ覗き込むような映像、白いカーテン越しの会話と映像の切り替えによる違和感の盛り上げとか、それぞれの音色を奏でながら階段を転がり落ちていく無数の大小様々なビー玉の行き着く先の死体とか、見どころがめちゃ多いです。これで失敗作とか言っちゃうバーヴァ監督すごいとしか言いようがない。それと使われてる曲が流す箇所のセンス含めてめちゃくちゃ良くて、頭から離れなくなります。

今回は海外版Blu-rayで見たのですが、英語字幕ついてるって販売サイトに書いてたのにどう弄っても全く表示されなくって悲しい思いをしました…。パッケージには字幕のことなんて書いてないし、騙されましたわ。おかげで見終わるまでにめっちゃ時間かかった。同じ時期に英語字幕ありって書いてある別作品の海外版DVDも買ったのですが、そっちにも字幕ついてなかったし。ちゃんと表記してほしいよ…(T . T)
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