ハマー・フィルムの吸血エロス。これは美貌を保つため処女の生き血を浴び続けるエリザベート・バートリ伯爵夫人のお話。

鮮血シャワーも無けりゃ処女殺しも無し。だが古城もセットもやはりハマー、抜群に良い。白髪で額には大きなイボ。シワシワな老いたメイクのイングリッド・ピットも頑張ってる。イッチャッタ顔して終わるのもオモロイ。処女の血で若返りどころか大変身。欲のために人を利用し、娘さえも殺そうとする悪女。恐ろしいわね。

• #70年代
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“血の伯爵夫人エリザベート・バートリ伝説”の初めての映画化。英ハマープロ・エログロ路線の一本。主演イングリッド・ピットは前作「ヴァンパイア・ラバーズ」（1970）のカーミラ役で注目を浴び、本作で“新ホラー女王”の称号を得た。監督は同路線で活躍したピーター・サスディ。

17世紀ハンガリー。強欲な領主エリザベート・ナダスディー伯爵夫人(イングリッド・ピット)は、年老いた自らの姿に絶望していた。それがある日、はずみで召使女の血が顔に触れたとたんに肌が若返ったことに気づく。早速エリザベートは、若い娘たちの血による若返り秘術に没頭。さらに、娘イロナを誘拐監禁させて自分が娘に成り代わり、若い良人と結ばれようとする。しかし血の効能は長続きせず、醜い老婆の姿に戻っては殺戮を繰り返し。。。

これまでに観たハマープロ映画の中でもかなり好みだった。特に古城の内装美術の立派さはハマー映画史上最高レベルで、物語の題材と共にゴシックムード満点に仕上がっていた。※衣装美術はイギリスで撮影された米映画「1000日のアン」（1969）からの流用との定説。

エリザベート伯爵夫人は“吸血鬼”の元ネタとなった有名な存在。しかし原題「COUNTESS DRACULA（ドラキュラ伯爵夫人）」から考えると、無関係なドラキュラ名を冠さなければ客を呼べないほど、当時は知られざる存在だったと推察できる。

そのマイナーだった存在を主人公に据えたことが本作の出来の良さに繋がっているように思う。本作以前のハマープロは、フランケンシュタインやドラキュラなどユニバーサル古典ホラーのリブートがメインだった。エログロ路線第一弾の「ヴァンパイア・ラバーズ」にしても主人公はカーミラであり、古典モンスター映画の範疇に留まっていた。

それが本作では古典モンスターのネームバリューに頼らず新キャラで勝負。新路線“エログロ”の土俵でスタッフのクリエイティブ精神が大いに発揮されたのではないか。

シナリオは、エリザベート・バートリ伝説に「ジキルとハイド氏」のスリラープロットを加えた発想が秀逸だった。さらに指摘しておくべきは、イタリアンゴシックの始祖「血ぬられた墓標」（1960）を参照しているに違いないこと。同作では医師がガラスで手に傷を負い、その血が唇に触れてバーバラ・スティール演ずる美女が蘇る。そして最後は老いた姿を現すのだ。要するにハマープロは本作で、1930年代ユニバーサルホラーのリブートから、1960年代イタリアンゴシックホラーの引用へと本格的に舵を切ったと言える。

この新機軸に主演イングリッド・ピットが実に巧くハマっていた。老けメイク時の暗い表情と、若返った時の晴れやかな笑顔の落差が見事。本作で彼女のカルト人気が確立したことも十分納得できた。

ハマープロのエログロ路線は、「ヴァンパイア・ラバーズ」と「ジキル博士とハイド嬢」（1971）しか観ていないので、この機会に集中して追いかけてみたい。

※エリザベート・バートリ伝説をモチーフにしたホラー映画
「鮮血の処女狩り」 (1970：イギリス)
「赤い唇」（1971：ベルギー×フランス×西ドイツ）
「悪魔の入浴　死霊の行水」（1972：スペイン×イタリア）
「インモラル物語※第四話」（1974：フランス）

※東映エログロ路線の第一作「徳川女刑罰史」（1968）は、東映の保有する時代劇セットと豪華絢爛な衣装を活用したものだった。本作の豪華な衣装美術には共通する魅力がある。

血の伯爵婦人エリザベート・バートリーをモデルにしたハマー・プロ製作ホラー。

小説「吸血鬼カーミラ」のイメージで観始めたらとんだ色ボケ伯爵婦人で期待がガタ落ちに…鉄の処女が出て来ないし、血の風呂に体を浸すシーンすら出て来なくて残念。

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• #ta_2017鑑賞