horahuki

ロバート・アルトマンのイメージズのhorahukiのレビュー・感想・評価

4.3
内面からのアクセス拒否!

これは傑作!!欲望を抑えられない奥様が新旧不倫相手の幻影に悩まされる『反撥』的なサイコホラー。「私は夫だけを愛すると決めたんだ!」とか言いながら、不倫相手に襲われたら襲われたらでニッコニコでキスを返す奥様の底なし沼な欲望の気持ち悪さがもうコメディ!🤣移ろいやすさが秋の空超え!!

久々のアルトマン。『三人の女』とコレしか見たことないのだけど、こんな感じの作品が多いならアルトマンめちゃくちゃ好きかも!

とにかく狂いっぷりが凄くて、夫と話してたと思ったらその相手がかつての不倫相手に変わっていたり、夫だけのはずなのに不倫相手にレイプされる妄想したりとガチもんな底なし沼。そんで「殺せば良いんだ!」と不倫相手(幻影)を物理で殺そうと動き出す…幻影なのに。

『三人の女』と同様に鏡像を多用し、会話シーンにおいても鏡越しのやり取りを何度も用いることで、他人ではなく自身の内面と対話しているような感覚を印象づけているし、『三人の女』では水に担わせていた自己の揺らぎを、何かよくわかんないブラブラしてる物体(ち◯こじゃないよ!)に担わせていて、モチーフを変化させた反復をしてるわけだから、もしかしたらこういう映画多いのかな🤔

その鏡の扉を開いた先には心象空間があり、照明や色使いを違えることでその変化を意識づけするだけでなく、かかってくる電話の相手も此方側と彼方側で違えさせ、彼方である心象空間側では自身の内面から電話がかかってくるという自己との対話を見せることで本作の方向性を的確に序盤で提示している。そしてそれは電話という、内面からの一方的なアクセスを拒絶する心的反応(受話器をあげる、電話のない空間への移動)と、漏れ出てきた内面(幻影たち)を銃とかナイフとかで殺処分しようとする狂気へと変化していく。

鏡や揺らぎだけでなく、角度によってイメージを歪めさせるような撮影や、不自然なほどに荒涼としたアイルランドの風景に埋没させるような孤独とその入れ替わりを強調するような映像も綺麗で、幼少期へと退行していくことが逃げ場となり仮初めの平穏を作り出すような危うさ、バラバラになったピースとしての自分等々、精神分析的な内容を最後まで押し通すのがすんごい好みだった!

あとVHSのトリミングが相変わらずエグくて、左右目一杯まで広げて情報を配置することが多い本作ではなかなか致命的だった😂それを自覚してだと思うけど、わざわざ右半分のみ映す→直ぐに左半分のも映す…みたいな荒技で乗り切ろうとしてる箇所が多くて、VHS会社も苦労してるんだな〜って何か面白かった!
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