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知りすぎた少女のhorahukiのレビュー・感想・評価

知りすぎた少女(1963年製作の映画)
3.9
20歳の女性(少女?)が友人を訪ねてやって来たローマで、偶然殺人を目撃してしまったがために、何者かの標的にされてしまうというジャーロ作品。

久しぶりのマリオバーヴァ監督作。ちなみに世界で初めて作られたジャーロと言われてる作品で、ジャーロ色は薄めではありますが、確かにその片鱗を感じさせる素晴らしい作品でした。

あらすじ…
家族の友人を訪ねてローマにやって来た主人公。でも、その晩に友人は体調が急変して死んでしまう。医師を呼ぼうにも電話が繋がらず、暗闇の中走って病院へ向かうが、その道中で強盗に襲われ頭を打ち倒れてしまう。ぼんやりとした意識の中、女性が刺殺されるところを目撃してしまう主人公。気がつくと朝になっており、連れられた病院でそのことを主張しても幻覚でも見たんだろと一蹴される。あれは幻覚だったのか…という話。

マリオバーヴァの映像センスが冴え渡る素晴らしい作品。冒頭で死亡する友人ですが、電話をかけようとする主人公の横で目をカッと見開いたままギィギィ音をたててベッドが揺れだすという、怪奇現象を見たかのような恐怖を植え付ける演出から始まり、真っ暗闇の中、巨大階段を下っていく主人公を捉えたカメラが引くに連れ現れる怪しげな男を捉えた構図だったり、その巨大階段を目一杯利用した大きな横への移動からの強盗シーンへの一連の流れが鮮やかすぎてテンション上がります。

殺人を目撃するショックシーンでも、顔のアップが非常に効果的に使われていて、犯人の顔を闇に紛れさせぼんやりとしてしか見せない演出と合わさり、ただの殺人シーンではなく「見てはならないものを見た」という印象を強く植え付ける。ここら辺は凄くジャーロっぽいし、アルジェントが影響を受けてるのが良く分かりますね。そんで、脚本面で許容範囲を超えるレベルの雑さを披露するあたりもジャーロっぽい。というよりアルジェントっぽい(笑)

本作は怪奇色強めなジャーロではありますが、全体的にコミカルさを意識した作風になっています。冒頭で主人公が騙されてマリファナ吸っちゃうシーンがあるのですが、その後の殺人が幻覚なのでは?と思わせる役割だけではなく、最後には笑いに変えちゃうシーンも用意されてたりするし、主人公を殺そうとしてるように見せかけて、実はただキスしたかっただけだったりとか物語的に全く関係ないアホみたいな演出があって遊び心に溢れています。それが良い効果を生んでるかというとちょっと怪しいような気がしますけどね(^_^;)

そういうところで中弛みは結構あるんですけど、キメるシーンはとことんキメる映像重視なバーヴァらしさ全開な作品で満足でした。アルジェントみたいに推理させるつもりが全くない作品ではなくて、結構犯人はわかりやすい作品なのもバーヴァらしさなのかな。バーヴァの他のジャーロも見てみたいと思います。
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