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甘く危険な女のhorahukiのレビュー・感想・評価

甘く危険な女(1969年製作の映画)
3.9
レンツィ版『悪魔のような女』

奥様公認で色んな女性と不倫しまくってるクソ夫ジャンレノ。でも奥様は隠れて涙を流してる…😭上の階に越して来た美女に早速恋した夫くんはストーカーばりに付き纏いヤッちゃうのだけど、実はその美女は訳ありだった…。凶悪な男に狙われている美女を助けられるのか…?っていうレンツィ製ジャーロ。

『サイコ』+『悪魔のような女』+『第七の犠牲者』+『The Strange Vice of Mrs. Wardh』って感じで、二転三転見え方が変わっていくのが超楽しい!!冒頭から不倫シーンなのだけど、不倫相手の女性は友人の奥様。しかも自分の奥様含めて4人全員仲良しグループっていう地獄みたいな関係性。多分友人も気づいてる…。みんなで集まってクレーン射撃とかパーティとかしてるんだけど、どんな心境なのコレ…😅とりあえず、不倫でショック受けてる奥様に「俺を労ってくれ」とか言っちゃう夫くんは完全に狂ってる!!

レンツィ×ベイカーの前作『狂った蜜蜂』から同じモチーフを繰り返しているのが面白かった。赤い傘の室内照明とか、薔薇とか、黄色と赤色と白色の対比とか、内面(本作ではもう1人の人格)と向き合おうとする時にゴシックホラーな演出を用いたりその結果がやはり閉ざされた扉だったりとか。

ただ、そのモチーフの使い方含めて演出面は完全に前作に分があって、微妙にチグハグになってる気がする。それでも、喧騒をバックに置くことで手前の無音の関係性が逆に際立つような視線のやり取りだったり、鏡像の相似構図の反復で意図を逆転させたりと、手堅く仕上げてる感じがした。露骨過ぎる赤の多用も、本心的な情欲に加えて否定的な要素も合わせて纏わせ、自身の内面的葛藤を4者間で描く上での綱引き的なことを丁寧に見せている。

男尊女卑的な発想を覆すかのように、同一人の別人格として設定された訳あり不倫相手&狙ってくる殺人鬼が全く「まとも」などではなく、当初の目的としての立場逆転を成し遂げているとはいえ、こちらはこちらで欲望塗れであって、結局は対象が変わっただけの同じことの繰り返しに過ぎないというニーチェ的なニヒリズムでもって男女や人と人の関係性を捉える視点が流石のレンツィだなと思う。
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