真っ黒こげ太郎

13日は金曜日PART25/ジャクソン倫敦(ロンドン)への真っ黒こげ太郎のレビュー・感想・評価

4.8
13金シリーズ走破の余韻に浸る中で発見したコレ。w

「このエイガ、すっごいバカなエイガだなぁ!」

と叫ぶために見たが…。w





故郷に戻った記念に、パーティ会場を血祭りに上げることにした、ホッケーマスクを被った殺人鬼(スラッシャー)のジェイソ…じゃなくてジャクソン。
イチャつく為に散り散りになったパーティ会場のおバカ連中をあの手この手でコロコロし、最後の一人である目の見えない女性シェリーに迫るジャクソン。

だが、彼氏を紹介してもらう予定だったシェリーはジャクソンを紹介してもらう彼氏と勘違いする!!!
無言のまま困惑するジャクソンを口がきけないと受け取り、仲間意識が芽生えたシェリーはジャクソンを自宅へ!!!w

困惑するままに自宅に招かれたジャクソンだが、前向きに生きながらも辛さを抱えるシェリーの身の上話を聞いたジャクソンは口を開き醜い素顔を見せ、自身が怪物呼ばわりされていた事を語り、お互いに分かり合った2人は愛し合い結ばれた!!!!(えゑ~!?)

実は文学が大好きでピュアな心の持ち主であるジャクソン。
アル中で元殺人鬼の父親に「好きな人ができたんだ!もう殺しはやりたくない!」と告げるジャクソンだったが、「俺たちは殺人鬼の家系なんだ!その宿命から逃れられないんだ!」と論されてしまうのだった。

その後ジャクソンはシェリーの為に普通の人として生きようとするが、彼の周りにはパーティー狂いのバカが群がってしまい、殺人鬼(スラッシャー)としての宿命が重く圧し掛かってしまう…。






盲目の女性と出会い恋に落ちたホラー映画のスラッシャーが、数奇な運命を辿る姿を描いた、「13日の金曜日」のパロディ・スラッシャーホラー映画。

13金シリーズを追う中、目に留まった今作。
まだ俺のバトルフェイズ…じゃなくて13の金曜日祭りは終了してないぜ!!!wwww

ってことで、どんなしょぉぉぉぉぉぉおおおもないZ級バカ映画が待っているのかwktkしながら鑑賞して見たのだが…。


…何と言うか、こんな凄い映画が埋もれていたとは思わずビックリ。



今作は「もしもホラー映画の覆面殺人鬼が恋に落ちたら」というトンデモな内容をベースに「決められた運命(ホラー映画のスラッシャーという役目)から逃れられない」というとある男の悲しみを描いている…。

今作のスラッシャーであるジャクソンは某有名な映画の登場人物として暗示され、その宿命が彼にじわじわと圧し掛かる。
彼はスラッシャーとして若者を殺すのが定め、どんなに言葉を交わし愛し合ってもスラッシャーと絡んだ以上ホラー映画としての定めからは逃れられない。
それがホラー映画の「あるある」であり「お約束」でもあるのだから。

クライマックス、殺しの生き方を選んだジャクソンはスラッシャー映画のお約束をメタ的に表した台詞を人々に語る。


「俺には人を殺すしかないんだ(スラッシャーの役割)」

「どんなに逃げても転んで追いつかれる(お約束)」

「これ以上殺したって退屈なだけだ(シリーズのマンネリ化)」

「人を殺すために生まれた、この宿命は永遠に続く(ホラー映画のスラッシャーの存在そのもの&シリーズ化)」

「君は死ぬか――忘れ去られるかだ(シリーズ化したホラーで主要人物が死んだり無かったことにされる)」

「子供を巻き込むことはできない(続編で死んだりするから)」

「これが化け物のサガだ(化け物=スラッシャー)」


そしてその極みが余りにも悲しいクライマックスとラストで、スラッシャーとしての余りにも非情な運命にジャクソンが押し潰される。
実はアホ丸出しの邦題も内容の的を得たタイトルであり、ラストシーンでこのタイトルが持つ”重さ”が響いてくる。

現在も様々なスラッシャーが生まれる今日ではあるが、まさかホラー映画の「スラッシャー」をここまで深~~~い視点で描いた映画とは思わず、驚かされてしまった。


とは言え、基本はアホとグロが交差するパロディ映画。w
もろに某有名な殺人鬼をモチーフにした男がお揃いのマスクを被った女性とデートして、ポエムを読んだり、SMプレイに困惑したり、都会の風にうたれながら悲しみに暮れるというシュールでアホな展開。w
(某毒々モンスターみたい。wこっちの方は重たいお話だが。)
ジャクソンの設定も某有名な殺人鬼まんまで、語られる過去はそのまんますぎるwwww

また、スラッシャーホラーとしても中々力の入った出来。
低予算故グロシーンは作り物感は否めないが、直接見せない場面が多かった元ネタとは違い、顔を剥ぐ場面や刺された鉄棒が肉に食い込む描写などをしっかりと映してくれるので、スプラッター描写としては中々のもの。
数は少なめだが、案外満足でした。w
(ちなみに特殊メイク担当の人は「ヘルレイザー2」の特殊メイクを担当したそうな。)


難点としてはこの手のバカ映画にしては描写が淡々としてる事。
後登場人物たちの静かなドラマがメインなため、派手派手で分かりやすいおバカ映画を期待すると失敗してしまうことだろう。
まぁ、今作の淡々とした演出は一人の男の悲劇と宿命をシリアスに描くために意図的にやってるのかもしれないけどね。


それでも、低予算に負けない内容で埋もれさせるのが惜しい傑作なので、DVD化してくんねえかなぁ…。
内容は人を選ぶかもしれないけど、普通に面白いしあっちじゃ何か賞を取ってるみたいだし。w
(因みにどうやって鑑賞したかは大人の事情で伏せさせていただきます。w
まぁフォロワーさんのレビューにどう鑑賞したか乗ってるんでそれを見れば分かると思いますが。w(オイオイ))


そんなこんなで、下手すれば本家以上に楽しめる(爆)、実に深い一作でした。
スラッシャーホラーの斬新な新しい見方(と言っても1988年の映画だけどw)として、一見の価値がある逸品ですよ。