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レ・ミゼラブルのkomoのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2012年製作の映画)
4.4
現在NHKでドラマ版を放送中と聞いて。
(1話も見れてないけど…。)

レミゼとの出会いは小学校時代に読んだ『あゝ無情』で、作者のメッセージを受け取れなかったためにあまり響かなかった記憶があります。
その他の媒体で観たのはこの映画のみ。
『レミゼのストーリーは自分には合わない』という先入観を拭い去ってくれた作品です。

貧しさゆえにたったひとつのパンを盗んで19年の刑に処されたジャン・バルジャン。
物語の開始時には既にやつれきったおじ様。
ある程度の年齢に達している男が、その後思いを改め、人々との関わりを経て、同じ人生の中で生まれ変わったと行っても過言ではないほど流転してゆく。
波瀾万丈な人間を描いた大河作品は数多くあれど、やはりレミゼは”絶望から見た希望”の描き方が、唯一無二の芸術性なのだと思います。
青春も初恋もなかったジャン・バルジャンにとってコゼットという少女は、普通の人が人生の中でまばらに味わう甘美な瞬間を、一身に集めた存在だったのでしょう。

主演のヒュー・ジャックマンの壮絶な歌唱力にただただ驚きました。彼はエンターテイナーとしてもアーティストとしても、人々を高揚させる才能を持っていてすごい。
ジャベール(ラッセル・クロウ)はなぜあんなにもバルジャンを追うのか分からなかったけれど、最後のけじめを見ると、バルジャンとは宿命の関係だったと思わざるを得ませんでした。

ファンティーヌ役のために頭を刈り大幅な減量をし、更にはその痩身に似合わない声量で『夢やぶれて』を歌い上げるアン・ハサウェイの退廃的な美しさ…。
そして美しく成長したコゼット(アマンダ・セイフライド)とマリウス(エディ・レッドメイン)の邂逅は、まるでバルジャンの青春時代を肩代わりするかのように淡くきらめいています。
忘れてはいけないのがエポニーヌで、本作の隠れた名助演。彼女がいなけれは多くの人々の運命が交錯することはなかったのだから。

ジャン・バルジャンの不条理な人生に光明をさすことになるのは、言わずもがなコゼットの存在と、それから司祭がくれた見返りを求めない親切。もうひとつは『Who am I?』という問いかけです。
苦渋の過去を抱き、目まぐるしく変わってゆく現実を前にし、揺るぎない自己を持ち続けられる人ってどのくらいいるのだろう。
私は怖くて、唱えられません。
”Who am I?”。



皆様、コロナウイルスは大丈夫でしょうか?
私は関東圏なので不安ですが、今のところ元気で過ごしています。
1日も早く収束して、以前のように映画や芸術を楽しめる世の中になりますように…。
みなさんも本当にご自愛ください。
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