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アルバート氏の人生のkingyohimeのネタバレレビュー・内容・結末

アルバート氏の人生(2011年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

主人公はダブリンのホテルでウェイターをしている男性、アルバート。
彼にはある秘密がある。
それは、実は女性であるという事。
物語の時代は今から100年以上昔で(多分)、その頃、女性が一人で生きていく事は困難だった。
さらに、ある不幸な事件をきっかけに彼は14歳の時から男性、ウェイターとして生きてきた。
彼の夢は、タバコ屋を開き、後に海辺の家で暮らすこと。
そのため、長年お金を貯めてきた。
ある日、ホテルの塗装に来たペンキ職人の泊まる部屋が無いという事で、彼と相部屋をする事となる。
そして、ペンキ職人に女性だという事がバレてしまう。
もし、女性だとバレたら職を失い、何もかも無くしてしまう。
でも、そのペンキ職人も実は女性で、しかも女性と結婚し、一緒に暮らしていると言う。
彼の話を聞いて、アルバートも将来の夢をふくらませ、以前から思いを寄せていたウェイトレスにデートを申し込むが、彼女にはつきあっている男性がいた。

かなり内容を書いてしまったけど、ここまで分かったとしてもこの映画を観てつまらないとはならないと思う。
あらすじや真相がどうのより、演技でしみじみと見せる映画だった。
主人公の、内気で健気に生きてきた初老男性の演技が見ていてしみる。
アルバート氏は女性なのに男性として生きざるを得なかった。
だから、自由になって女性として人生を生きてみたいのかと思いきや、第二の人生でも男性のままで、妻が欲しいと思っている。
自分のそれまでの人生を肯定しているのかと思うし、男性というものに嫌気がさしているのかもしれないとも思った。
それにしても、もう周囲からは「老人」と呼ばれる歳まで、ずっと女性である事を隠し通して、そのため親しい友人もつくらず、恋人もおらず、何て孤独で淋しい人生だろうと思った。
一生懸命、きちんと仕事している様は尊敬できるものだし、彼の人生を憐れむ気持ちなんて全くないけど、だからこそ、淋しいと思ってしまう。
報われて欲しいと思ってしまう。
自分の事を好きじゃない女性を好きになって、散財する場面は観ていてヒヤヒヤしたし悲しかった。

女性が男性の役・・・しかも長年男性だった人の役をするという事で、かなり難しかったと思うけれど、見事な演技だった。
映画の中で、アルバートが女性の服を着る場面があるけど、むしろそっちが違和感あるくらいだった。
それと、ペンキ職人役の人も、後で年齢を見てビックリ。
あまりに男性役がしっくりきてたし、すごく若く、美青年という風だった。
ほんのひと昔前の話だけど、こんな人生を送らないといけないくらい、女性は生きづらい時代だったんだな・・・。
この映画では、男性・・・特に、上流階級の横暴ぶりが目についた。
それと同時に、労働層の厳しい暮らしぶりも垣間見える。
こんな世の中だったから、もしかしたら、このアルバート氏のような人は結構いたのかもしれないな・・・と思う。
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