たにたに

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかのたにたにのレビュー・感想・評価

3.9
【体液】2023年100本目

1964年公開ということで、冷戦真っ只中。

アメリカの強烈な反共産主義者リッパー将軍が、ソ連に核を落とすべく「R作戦」を爆撃部隊に"勝手に"通達するという、やってることは全く笑えないけど、でもこの世の中ありえなくないよねとも言わんばかりのブラックユーモアたっぷりの一本に仕上がっている。

リッパー将軍においては、ソ連に水道水を汚染されていて、我々の体液はすでに潔白なものではない、というわけのわからない陰謀論を語り出す。
この1人の狂った男によって、世界滅亡の危機に追い込まれるのをなんとか止めようと躍起になるアメリカ政府。
そこから出てくる絶望的な事実。

ストレンジラブ博士の出自はドイツで、いまだナチズムに傾倒していることがうかがえる。
ソ連の皆殺し兵器の自動発動に対するアメリカの対応についても彼の発言は非情な差別主義者そのもの。

核を保有していることで平和が保たれているという皮肉。
戦争というのが誰か一人の采配によって巻き起こり、そして無駄な犠牲を生んでしまうということ。
陰謀論にさらされる人間の心の脆さ。

様々な感情が湧き起こる作品でした。
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