平野レミゼラブル

凶悪の平野レミゼラブルのネタバレレビュー・内容・結末

凶悪(2013年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

山田孝之!ピエール瀧!リリーフランキー!日本を代表する名優であり怪優である3人が揃い踏み!!彼らで喜劇を作ればかなり笑えるものが作れそうだが、残念ながらこれは徹頭徹尾陰惨な犯罪実録ものである。

本作は「上告書殺人事件」をモチーフに作られた映画で、死刑囚のヤクザの親分にピエール瀧、その共犯者で黒幕でありながら娑婆でのうのうと暮らしている「先生」にリリーフランキー、そしてそれを追う記者に山田孝之を据えている。

基本的に昔ながらの任侠で家族と舎弟思いだけどキレると何をやらかすかわからないピエール瀧と、『やがて父になる』同様にマイホームパパなんだけど頭の中ではえげつない犯罪プランを考え笑いながら拷問を楽しむリリーフランキーの演技が秀逸。

特にバラバラにした遺体を焼却処分した直後にターキーを焼いてのクリスマスパーティーのシーンを入れてくるのが悪辣極まりない。それも超平和な家族団欒シーンなのが本当に酷い。残酷すぎる。

彼らを追う山田孝之は紛れもない「正義」側の人間なんだけれども、家族から目を背けて凶悪事件を追うことに没頭していく姿がちょうど彼らとの対比の構図になっているのがまた皮肉。
最初こそ自分を嵌めた「先生」に憤っていたピエール瀧の憎悪が次第に薄れていくのに対して、全く無関係な山田孝之の方が「先生」への憎悪を深めていく逆転現象なんかは他人事ではない。
好奇心から世界のシリアルキラーを簡単にネット検索してはあまりの残虐さに憤る自分自身を映す鏡のような寓話である。

好奇心から凶悪事件をも娯楽に堕してしまう人間の冷酷さを、ラストに対面するリリーフランキーの姿…否、ガラスに映った山田孝之の姿が何より雄弁に語っている。