ダメだわ…やっぱ勝てる気がしない…
冒頭の土砂降り、唐突にガラスを割ってスローで割り込んでくる犯人。主人公と犯人の格闘戦を目まぐるしいカメラワーク、そして逃走と追跡へ。韓国映画を象徴する不快でふけつな路地裏での追跡シーンは、異常なまでの臨場感あるカメラワークとキビキビとキレのあるアクション。POVのように振り回される一連のチェイスとパルクールのように建物を飛び移りながら織りなすアクションは、土砂降りとネオンが相まって、韓国版「ブレードランナー」でも体現してやろうという野心が伝わってくる。この冒頭だけで伝わる本気と野心の訴求力に脱帽です。
時が経ち、連続殺人は時効を迎えると「私が犯人です」と著者を引っさげ裁くことのできぬ殺人鬼が甘いマスクと薄気味悪い笑顔を振りまきメディアの前に姿を現わす。サスペンスティブにメディアの混乱と事の真相に期待を抱かせ、遺族と主人公を合わせ大胆にもカーチェイスシーンというアクションにも振り幅をもってくるエンターテイメントぶり。無茶のある設定ながら緊張感と裏腹にコメディックなやり取りで予想をつかせず、思考を追いつかせず見るものをグイグイ引き込んでいく。
犯人と主人公の刑事が相対するところから、ジョーカーの出現に至るまで格闘技かプロレスを見ているかのようなエンターテイメント性溢れるカメラワークとドンデン返し。カオスを用いて観客を置いていかせながらギリギリ追いつけるようにクライマックスのキャラの配置まで良くできた脚本に喝采を送りたい。
「殺人の追憶」とはまた違ったエンターテイメント性と不快で胸糞の悪いシークエンスを詰め込んだ傑作。邦画がどうしても距離を詰めることのできない壁を感じる一本。