死んだふりをするかもしれない。
森の中でクマに出会ったことはないが、個人的にはそれに匹敵するかもしれないシチュエーション。
パリへ向かう飛行機、隣の席には決して良い別れ方とは言えなかった昔の恋人が座っていた。
逃げ場のない6時間のフライト、2人で過ごしたパリでの話になるのだが...。
別れた恋人と、過去の出来事を照らし合わせる"恋の神経衰弱"なんてしないに限る、と思っている。
カードが合わなかったら「ほらね、やっぱり」「(イラッ)」としてしまいそうだし、ピタッと合ったら合ったで「やっぱりこの人が...！」とか「どうして、あの時」とか思ってしまいそうである。
大学時代、別れてはヨリを戻す事を繰り返し
「今、シーズン何だっけ？」
「3ですね、でももうこれで完結させます」
と言って別れた後の飲み会で
「映画だって、ドラマだって、シーズン1を超えるのは難しい」
「シーズン2からジャンル変わってたよね」
「コメディだった」
「え、ホラーだったでしょ」
「ま、お疲れ」
「シーズン4やらないでね」
という友人達の愛の言葉と、お酒を浴びながら【ヨリ、モドスベカラズ】と誓った事を思い出した。
若かった。
2人を見守る他の乗客達が可愛い。
私も乗り合わせていたら、思いっきり聞き耳を立ててしまうだろう。
昔の恋に感染しないくらいに、他の恋で"ワクチン"は接種してきたと思っているが、実際のところはどうなんだろう。
とりあえず、この2人のようなオシャレな仕上がりにならない事だけは確実。
