このレビューはネタバレを含みます
罪。首。ブラピ。
このキーワードから思い浮かぶ映画はなんでしょうか。 ご存じの方はご存じ、フィンチャー監督の「セブン」という名作。
メキシコ国境近くの漠々とした光景はセブンのラストシーンで 「最後の罪」を見届けるべくミルズが歩いてた鉄塔あたりの原野みたい。 セブンの中でブラピ演じる若い刑事がモーガンフリーマン演じるベテラン刑事に、 「この街で生きて行くには君はピュア過ぎる」って憐れみの目で見られていました。
この作品でも、全ての罪はカウンセラーの無垢さが発端かなーって。 だってそうじゃないですか。あまりにも猥雑で汚くて ノーモラル、ノールールで、人間の命の価値も軽くて それがレギュラーなあの土地において、 アルマーニのスーツを端正に着こなし、恋人を真っ直ぐに愛する、 きちんと婚約指輪を用意してセオリー通りのプロポーズをする 「正統派ハンサム」なんざ異端以外何物でもない。
視点を変えてライナー(バルデム)やウェストリー(ブラピ)の側から カウンセラーという人ををみれば 「なんというあまちゃん、なんとキチガイじみた素人さん」なんだ。 そもそも彼らが対峙してた「奴ら」についてはっきりしないのも、 カウンセラー(観てる側も)が事態がよくわからないうちに、 取り返しつかないことになってるのが恐怖感を煽るね。
最後の最後、スペイン語の部分「製作者の意図により字幕をつけていません」てのも効果的。 周りでなにを喋っているかわからない、自分ひとり異国人、異端という 「ぽつねん」とした不安感をカウンセラーの心もとない心情が表れていた。
婚約者が拉致られるのはもうオープニングから火を見るより明らかなんで、 だから「結末が見える」とかそういう批判はなしの方向で。 これは謎解きでもサスペンスでもなく、 台詞劇の中で日常が崩れて手放しで落ちていく人たちの姿を見る作品だと思うから。
少年が届けてきたDVDをみて(その中身の映像ではなくディスクそのもの)をみて 泣き崩れるカウンセラーは箱を抱えて泣き崩れる若き日のブラピにダブって見えましたよ。憐れで救いがないほどだったよねミルズ刑事。
評価は高くありませんが、悪くないかなーと私はおもった。 人体がモノのように破壊される様子は思ったより血生臭くもなかった。(当社比)
ちょっとハズれた「ジャッキー・コーガン」もほぼ台詞ばかりで辟易したけど あれに比べたら、余程グサグサ突き刺さる「悪の定義」は意味のあるセリフばかりで、眠くなるヒマなかった。