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嗤う分身のchikichikiのレビュー・感想・評価

嗤う分身(2013年製作の映画)
4.1
 ロシアの文豪ドストエフスキーの中編小説『分身(二重人格)』を原作とした作品。
本作で監督を務めるは『サブマリン』のリチャード・アイオアディ監督(コメディアン俳優としても活動されている方)。


 内気で要領が悪く、存在感の薄いダメダメな主人公・サイモンの前に、自分と全く同じ容姿を持ちながら、性格は真逆でイケイケな男ジェームズが現れる。
 そんな"正体不明の男"に翻弄される"冴えない男"の物語。


 まずは、主人公サイモンと謎の男ジェームズを見事に演じ分ける、ジェシー・アイゼンバーグの演技がお見事!!
 →コメディ出身なだけあって、ただイケメンといだけではない、どことなく愛嬌のある雰囲気や、彼らしいやや早口なセリフ回しが主人公のキャラクター並びに、本作品のテイストには非常マッチしておりました!!

 また、ヒロインのハナを演じたミア・ワシコウスカがとってもチャーミング!!
 尚且つ、衣装のセンスもとっても素敵!


 そして、本作の持つ独特の世界観を創り上げる、リチャード・アイオアディ監督らしいカメラーワーク、カット割、構図、ライティング等を駆使した、スタリッシュな映像表現。


 観ている側の意表をつく様なズラしの効いた、独特なテンポを持った語り口なので、慣れるまで、なかなか乗りづらいのがやや難点でありますが、それが同時に本作の魅力の1つでもあると思います。

 また、原作から脚色によって本作品独特の世界観を作り出せている事はまず間違いありませんが、要所要所で畳み掛けてくる様な矢継ぎ早な編集がドストエフスキーの原作小説の文体とも近いモノがあり、しっかりと原作に対するリスペクトが感じられのも個人的には好印象でした!!


 加えて、劇中歌として坂本九さんやジャッキー吉川&ブルーコメッツの60年代の昭和歌謡曲が採用されていたのが日本人としては嬉しい。笑
 →勿論、演出としてもアナログでノスタルジックな雰囲気が出ていて良かったです。


 本作の独特のテンポ感を上手く言い表すのはかなり難しいのですが…

こちら側が予想しているテンポ感をかき乱されながらもクセになる感じ、という点ではなんだか、歌手の玉置浩二さんの歌唱の(ライブ時の)ようなテンポ感だなーと。

 CD音源とは違ったリズムに一瞬呆気に取られるものの、その実、譜面通りに歌うよりも、より情感が乗り、ズラしによってつんのめった心が、後から押し寄せてくる情感に引っ張られていくような感覚(だからこそついつい引き込まれてしまう。)とでも言うのでしょうか…
(多分もっといい例えがあったばすっ!笑)
 

 なので内容云々よりも、本作の独特のリズムに乗れるか乗れないかによって、かなり観やすさが変わってくる作品かなーと思います。


 個人的はかなり好みな作品でした!!
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