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テロ、ライブのbackpackerのレビュー・感想・評価

テロ、ライブ(2013年製作の映画)
3.0
不祥事でラジオキャスターに左遷された元アナウンサーのユン・ヨンファ。
ラジオ宛にかかってきた脅迫電話の通り発生した橋の爆破テロ事件のを、TV復帰の足がかりに使おうとするユン。
しかし、犯人との会話がTV放映される中、隠していた不祥事があばかれ始めて窮地に陥る……というサスペンスの本作。

ラジオスタジオ(早々にTVスタジオに早着替えしますが)という一室で物語の大半が展開し、ワンシチュエーションものに近い作りとなっており、主人公が動けなくても、物語は如何様にでも強弱硬軟織り交ぜて展開させることができるという、好例です。
誰が犯人かを突き止めていくような謎解き面に対しての捻りはなく、淡々とした進行の物語ではありますが、むしろ削ぎ落とされてコンパクトな作りの方が、描きたい事を突き詰められていいですよね。


政治家、著名人、財閥一族等の汚職や不祥事に一際敏感なお国柄ということもあり、テロ事件の原因、ユンの置かれた境遇、TV局内政治と検察権力の密接な癒着。それら全てが、政治・権力闘争の果ての産物として描かれます。
そここらは、政治・社会・対人関係への不信感がプンプンと匂いたち、穢れて忌々しい争いによって庶民の犠牲が堆く積み上げられている現実への怒りは、申し分がありません。

どこまでも生き汚く、這いずり回って執着し、天から垂らされる蜘蛛の糸を掴まんともがき続けたユンが、最後の最後にたどり着いた諦念からなる悟りの境地。
スイッチを押すことが、残された唯一の開放だったのか、逃げ道を失った自暴自棄か。
どちらにしても、とかくこの世は生きにくい……ですね。
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