ゆーあ

パシフィック・リム アップライジングのゆーあのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

観終わったあとの最初の一言
「ポストクレジットをくれ!!!!!」

今作の主人公は、前作で命と引き換えに大役を成した英雄スタッカー・ペントコストの息子ジェイク。浅慮ゆえの行動により防衛軍から除籍され、放蕩三昧の生活を送っていた彼が、ある少女との出会いをきっかけに復隊し、若手訓練兵とともに敵に立ち向かう-いわゆる「第二世代」の物語です。
そのため主人公を筆頭に登場人物のほとんどが新キャラで、新たな関係性がたくさん生まれる一方、シリーズの根幹であるカイジュウVS巨大ロボットのはちゃめちゃバトルも描かなくてはならないため、まあ~~尺が足りない!人物描写に時間を割けないのはなかなかの痛手で、例えば無人イェーガーを乗っ取ったカイジュウに基地を壊滅させられ、絶望に打ちひしがれるさなか、競合他社が現れ結託の意志を交わすシーン。普通だったら燃え上がる展開なのに、競合他社の社長であるリーウェンの罪悪感や本来の正義感を描写する余裕がないため、それまでの高飛車暴君な振る舞いを許しきれない。また人手が足りないとはいえ東京大決戦に実戦経験のない訓練兵だけで出陣するというのは、さすがにストーリーの都合を感じてしまう。そもそも主人公のバックグラウンド自体が充分説明されておらず、その人となりが「お父さんが偉いと大変だな」「やればできるんだな」くらいしか分からない。そのせいで父の威光がまぶしすぎて閉ざし続けていた目を開き、もう逃げないと自分を奮い立たせる気合も込めた訓練兵への激励も正直そんなに響かない。スターウォーズから、ジョン・ボイエガこんな役続くなあと思うくらい。今作にスタッカーは登場しないので、この親子がどんな関係だったのか追想することができないのが一番の原因かなあ。まあ1作目ではジェイクの存在はなかったわけだし、いきなりI am your fatherと言われても受け入れきれないよね。
このシリーズに分断された親子関係をつなぎ、浮かび上がらせることができる唯一の存在がマコだったのですが…うわ~~~死んだ!!!!!これはめちゃくちゃショックでした。大好きなキャラクターだというのはもちろんですが、死んだ理由が「ジェイクを成長させるための荒療治」なのが残念でならない。ここで確信したのですが、デルトロ監督の創ったキャラクターって、完璧に魅力的だけど、他の人が動かすにはものすごく難しいんだな…。その点では潔く登場人物を総入れ替えし、前作のキャラを退場させたのは英断だったかもしれない。いやでもやっぱ殺さなくても!!(泣)

さて冒頭からネガティブな書き出しになってしまいましたが、何故こんなに人物描写の不足を嘆いているのかというと、新キャラとその関係性がおしなべて魅力的すぎるからなのです!もっともっともっとたくさん見たいからなのです!!ジェイクは上記で述べた自分に対する弱さの一方、失態に落ち込むアマーラに軽口を織り交ぜて慰めるナイスガイっぷりがとても良かった。ラストの富士山頂でアマーラと笑いながら雪合戦する姿はその真骨頂だなあ。相棒ネイトは絵にかいたような正統派イケメンで、イェーガーに搭乗している時はもちろんだけど、夜のキッチンで語り合うシーンが、離れえぬ相棒の縁を感じてお気に入りです。そして何より訓練兵ズ!彼らの交流には連続テレビシリーズやコミックでスピンオフが作られるくらいの青春ドラマがあるはず!…というわけで、先ほどあれだけボロクソ嘆いたのは、美味しそうな食材を前にして食べられない飢えによるものなのです。せめてポストクレジットで断片を味わいたかった…。エンドロールを5回くらい中断して挿入してほしかった。基地に戻ったアマーラが、自作の大型イェーガーの設計図をヴィクに見せるシーンとか見たいじゃない。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.2』を見ならってくれ。

前作『パシフィック・リム』は練り上げられた世界観と設定でオタクを中心に多くのファンを魅了しましたが、『アップライジング』はその盤石な土台の上で展開される続編としての面白さが沢山あります。裂け目が閉じられカイジュウ戦争が終結した後、迅速とは言えない被災地の復興と物資不足による治安悪化の中で、違法にイェーガーを製造しようとするアウトローが現れる。ヒロインのアマーラもその一人で、彼女が造ったスクラッパーを見ていると、自分はどんなイェーガーを造ろうかな?と夢が膨らみますね(笑)。また一方で急伸する中国企業が無人イェーガーをリリースし、市場の支配を目論む。パシリムは巨大ロボットVSカイジュウがテーマなので無人イェーガーが台頭しちゃうと元も子もないのですが、「人が乗るより効率的じゃん」という主張は完全に理解できる(笑)。この辺の、外部からの強大な敵を撃退した後に起こる利権争いも面白く、しっかり一作目の先の世界を描けているなあと思いました。

最終決戦のスクラッパーの活躍を見ていると、イェーガーの無人化もいいけど、補給や修繕用の小型サポート機も有用そうだなあと思いました。今作はメイン機体のジプシー・アベンジャーをはじめ新型のイェーガーが沢山登場します。個人的に武器はガーディアン・ブラーボの電撃鞭に惹かれるのたけど、セイバー・アテナのエヴァ弐号機感が良かったです。それに乗っているのが日本人てとこも含めて、絶対意識してるよね?!その他イェーガーの造形はどれもイカしてるのですが、私は世界各国の代表を集めたワールドチームものが好きなので、今回各機体の国籍要素が薄れてしまったのちょっと残念でした。

さてイェーガーに乗らないバディといえば博士ズですが、今回この二人については喜怒哀楽全部盛りでしたね~~とにかくハーマンが健気で…!(泣)成功して変わってしまった友達を、ただもう一度「一緒に何かを成し遂げたい」という思いで縋りつく様は無垢なほど純真で、それが叶った時の嬉しそうな顔はもちろん、それは一時のもので、もう戻れないほど別のモノになってしまったとわかった後も、なお殺させまいとリーウェンの銃を弾く様は胸が痛くなりました。東京大決戦の後、ハーマンは拘留されたガイズラーのところに毎日通って語りかけるのかなあ。それとも研究室にこもりきってストイックに解決方法を探るのかなあ。ここの二人の今後こそもっとも続編を望むところです。

もともとデルトロ監督のオタク趣味から作られた『パシフィック・リム』。コミックやアニメとの相性は間違いなく良いと思うので、是非メディアミックス展開で描き切れなかった人間模様などを盛り盛り補完してほしいです!
ゆーあ

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