茜

アンダー・ザ・スキン 種の捕食の茜のレビュー・感想・評価

4.0
パッケージとあらすじを見た時点ではB級SF映画みたいな感じだろうと思っていたら全然違う。
もっとカルト的な感じというか、初めて観る独特な雰囲気の映画で面白かった。
海外版のパッケージの方が、もっとこの映画の内容に近いデザインになっていると思う。

冒頭に真っ黒な画面が長く続いたので、ネットの接続が止まってしまったのかと思って焦ってしまった…。
画面は基本的にシンプルで、無駄にゴチャゴチャしたシーンは殆どなく、常にあっさりとしている。
ほとんどが黒基調の暗い色彩だけど、ふいに画面が真っ赤になったり、カメラに眩しいくらいの逆光が当たるシーンが挟まれて目が覚める。
主人公のスカヨハもほとんど表情がなく、笑うこともなければ、大きな声を出すことも一切ない。
音も抑え気味で全編通してとても静かだけど、時折流れるうるさくないのにカオスっぽいBGMが妙に不安を煽る。

主人公にホイホイ付いていく不純な男たちと、ラストの燃えるシーンを見ていると、見た目で判断することの残酷さを感じる。
得体は知れないけど「美しい」というだけで何も考えずにグイグイと強引に迫ってくるくせに、
得体の知れない「不気味」なものは容赦なく燃やして抹消してしまう。
日常やインターネットの世界でも、形こそ違えどよくある事だと思う。

映画の中盤で、神経線維腫症を患い顔が極端に変形してしまった俳優さんが出てくるけれど、
主人公は彼に対して至って普通に接し、彼の手について褒めたりする。
主人公と接触する男たちはみんな動悸が醜くて、純粋で美しいコミュニケーションを取ろうとする人はいなかった。
でも顔の変形してしまった男性は、他の男たちとは違う純粋なコミュニケーションを主人公に求めてきた。
見た目は醜くても心は美しい彼に出会った事で、主人公は人間の持つ愛みたいなものが知りたかっただけなんだろうなぁと思う。
だから最後のシーンでは人間の汚さや浅はかさのようなものを感じてしまって、何だか凄く哀しかった。
不思議とあの真っ黒な物体が、私には怖くも気持ち悪くもなく、どことなく寂しい人間みたいに見えた。
茜