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独裁者と小さな孫のemiのネタバレレビュー・内容・結末

独裁者と小さな孫(2014年製作の映画)
3.1

このレビューはネタバレを含みます

独裁者とまだ幼い孫がクーデターによる政権崩壊で命を狙われ国内逃亡をする話。

街中の灯りを命令ひとつでつけたり消したり、そんなシーンで始まる本作。
幼い孫は唯一の男の子で、おそらくこの国を背負って立つことが決まっていたのだろう。この無垢な戯れに一体どれだけの人々が振り回されるのかも、国民がどのような生活を送っているのかも知らぬままに…。

孫にゲームだと教え込み、旅芸人のふりをしながら逃亡を続ける大統領達。ここまで逃げれば、国境までいけば、兵士たちの目を掻い潜りながら続く旅路で、残念ながら彼に救いの手を差し伸べるものは殆どいない。
その道程で政治犯として投獄され拷問を受けた者、無秩序な兵士たちに犯され死を選んだ花嫁、撃ち殺される女子供。国民の殆どから憎しみの声を聞かされ死を願われるような大統領達の旅。

大統領の心中が語られる台詞はないが、凄惨な光景を目にしながら、信じられないとでも言うような戸惑いの表情が彼の独裁ぶりを物語る。
孫はただただ教育されたままに大統領である祖父を慕っているし、ゲームが終わればアイスが貰える。宮殿に帰れる、愛しいマリアと再会できると信じている。
大統領も悪人として露骨に描かれることはなく、どちらかといえば無知な印象だ。このように思われていることを想像だにしていなかったかのよう…。国民からすれば余計にタチの悪い話ではあるが、実際そんなものなのかもしれないと妙に腑に落ちる面もあった。


浜辺に作られた砂の宮殿が脆くも波に攫われていく様子が国の崩壊を物語っていた。
あの後、大統領はどうなったのだろう。絞首刑にしても、火炙りにしても、これでは何も変わらない。民主化のために踊らせる…そう提案した男の言葉は受け入れられたのだろうか。
願わくばそうあってほしい。


余談としては、ダンボールを被せられて旅芸人の孫として踊る孫が絶妙に可愛かった。
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