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みかんの丘のYYamadaのレビュー・感想・評価

みかんの丘(2013年製作の映画)
3.9
佳作!傑作!【外国映画のススメ】
『みかんの丘』

◆製作国: 🇪🇪 エストニア
     🇬🇪 ジョージア(旧グルジア)
◆製作年: 2013年
◆ジャンル: 人間ドラマ
◆受賞歴:
・第87回アカデミー賞:
 外国語映画賞ノミネート

〈見処〉
①戦争の不条理と人間の平等性を描く
 静かな佳作
・『みかんの丘』(原題:「Mandariinid」=マンダリンみかん)は、2013年にエストニアとジョージア合作にて製作されたフィクション映画。
・本作の舞台は1990年代前半のアブハジア自治共和国のエストニア人集落。ジョージアとアブハジア間の紛争により、みかんの収穫が気になるマルゴスと、みかんの木箱作りのイヴォの2人の老人が留まるのみとなっていた。
・ある日2人は戦闘で負傷した2人の兵士を自宅で介抱する。1人はアブハジアを支援するチェチェン兵、もう1人はジョージア兵で、彼らはお互い敵同士だった。同じ家に敵兵がいることを知った兵士たちは殺意に燃えるが、イヴォは家の中では戦わせないことを告げ、兵士たちは戦わないことを約束する。数日後、事実上アブハジアを支援するロシアの小隊が集落にやってきた…(eiga.comより抜粋)。
・本作は、世界で最も民族的に多様な地域のみかん畑で働く2人のエストニア人が敵同士の傷ついた兵士を看病する姿を通じ、戦争の不条理さを描いた佳作である。

②ローカル性を学ぶ
・ジョージアはコーカサス山脈南側、黒海とカスピ海の中間に位置する小国。日本では大相撲の元大関・栃ノ心の出身国として認知されている。
・周辺は世界で最も民族的に多様な地域。1991年のソ連崩壊に伴い、独立を果たしたジョージアだったが、ソビエト共産党が抑圧していた民族問題がソ連崩壊にて表面化。アブハジアがジョージアから独立を求めて紛争状態に陥った1992年から停戦合意に至った1994年の間の出来事として、本作は描かれている。
・アブハジアに住むエストニア人、アブハジアを支援するチェチェン人、アブハジアと戦うジョージア人という複雑な4人の背景を理解して鑑賞に臨みたい。

③結び…本作の見処は?
○: フィクションながら複雑で繊細な史実を背景に描かれた本作は、戦争の不条理さを描いた静かな人間ドラマとして、確実に余韻を残す。同じ作品背景を持つ『とうもろこしの島』(2014)よりも、反戦色が強い。
○: 複雑な4人の人間関係が強まっていく過程が 丁寧に描かれ、反目する負傷者二人が共に互いを認めあう様は感動を覚える。4人の俳優の演技が素晴らしい。
▲: 複雑な関係を理解しないと作品についてゆけない。『とうもろこしの島』を先に鑑賞したほうが良いかも。
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