河豚川ポンズ

リリーのすべての河豚川ポンズのネタバレレビュー・内容・結末

リリーのすべて(2015年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

人の自由を考える映画。
観たい観たいと言っていたのがやっと見れました。笑
アリシア・ヴィキャンデルにエディ・レッドメイン、さらにはベン・ウィショーと今話題の若手が勢揃いですね。

20世紀初頭のデンマークで風景画家として働くアイナー・ヴェイナー、そしてその妻であり肖像画家のゲルダ・ヴェイナー。
二人は仲睦まじい夫婦生活を送っていたが、本業の画家としては夫のアイナーだけが評価される一方だった。
ある日ゲルダの描いていた絵のモデルの女性が来られなくなり、夫のアイナーに足だけでいいからモデルを代わってして欲しいとゲルダは頼み込む。
仕方なくアイナーはタイツとヒールを履いてみると、妙な感覚に襲われる。
一方でゲルダは想像以上にしっくり来ていたアイナーを見て、冗談で女装させて今度のパーティーに「リリー」という名前で参加させようとする。
自分の中での感覚のズレが収まったかのように感じたアイナーは、最初は乗り気でなかったもののリリーとしてパーティーに参加することとなる。

色々と癖の強い役をやることが多いエディ・レッドメインですが、今回のそれはおそらく一二を争うレベルで難しい役柄でしょう。
実在したアイナー・ヴェイナーは本当に男装した女性だと間違われるほどに中性的な顔立ちだったそうですが、この映画でのエディ・レッドメインは仕草や表情の動きまで、全てにおいて女性的というか、もうなんならほんとに実はLGBTなんじゃないかと思わせる程の演技を見せます。

一方でそれに戸惑いながらも夫婦としての関係、もしくはそれ以上の信頼関係で結ばれ、そしてそれを保ち続けようと葛藤するゲルダにもアリシア・ヴィキャンデルの演技が光ります。
オスカーの助演女優賞はやはり伊達ではなかったです。

時には心ない拒絶を受けながらも周囲の人たちに支えられながらも本当の自分らしさを追い求めようとするリリーは本当に力強く、最後には手術の結果で亡くなってしまうものの、自由と自分らしさを勝ち得たことを確信してゲルダと話すシーンに、この映画のメッセージの全てが詰まっています。
まるで自由に空を翔る鳥のように、風にたなびくスカーフというラストのシーンはまさにその象徴なのでしょう。

現代でLGBTの問題が段々と直面してくる上で、この映画はとても良いメッセージを送ってくれているものだと思います。