小一郎

パンターニ/海賊と呼ばれたサイクリストの小一郎のレビュー・感想・評価

3.6
光と闇。光が強く輝けば、闇は深くなる。プロスポーツにおける光はスター選手で、闇は組織。光が闇を照らすほどに輝こうとすれば、闇はさらに深くなる。闇の前に光はあまりにも無力だ。

パンターニはイタリアのプロロードレース選手。 通算36勝をあげ、1998年にはジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランスの2大レースで個人総合優勝。とにかく登り坂が強く、後方からごぼう抜きしていくレーススタイルは、人気にならない方が不思議だろう。

絶頂を極めたパンターニだったが、あまりの強さゆえ、他の選手がテレビに映らずスポンサーの不満が高まる、賭けの対象として利用されやすいといった、競技とは直接関係のない“大人の事情”に巻き込まれていく。

〈スキンヘッドに顎ヒゲをたくわえた容貌や、レースに対する求道的とも言える姿勢から「海賊 (il Pirata)」「走る哲学者」といった愛称で呼ばれ〉勝つことに純粋だったパンターニ。もしこれがドラマだったら、彼が闇の中の一筋の光明となり、観ている側はカタルシスを得たのかもしれない。

しかし、現実は闇に飲み込まれて消えていく。切なくて、希望もないけど、これも真実。こういう真実は、ヒーローによってしか語れないのかもしれない。