このレビューはネタバレを含みます
映像もとてもきれいだし、出演者の名前をみても豪華、みな良い演技をしていたと思いますが・・・なんとも痛かったなぁ。痛すぎる。あぅ。
ミシュランの星を取ることって、そんな大きなことなのね。たかが星、されど星。アダム自身の再起、ミシュランの星、全ての頂点がそれ、といった描かれ方が何ともつらい。そのために怒鳴られたり皿を投げつけられてる厨房のみなさんがとても気の毒。
レストランのスタッフ集めのあたりまではわくわくしながら見られたのよね。アダムが見出したり育てたりする、それぞれの得意技とかあるのかな、って。
厨房みんなの力なくしては星どころか、逆にスタッフ一人に全てが覆されてしまうこともある。アダムが癇癪起こしてひっくり返す皿のように。
そして、この話の中では、何故だか料理が見えてこないのよね。白いお皿に色鮮やかなお料理を盛り付けていく手元や食材のアップの画は、確かにとてもすばらしいし、なんだか「食彩の王国」の映像をみてるみたいだなぁ、なんて。頭の中で薬師丸ひろこのナレーションが。
でもね、それが、はたして食べる人のために、食材を吟味して拵えた調理人の魂という感じがしなかった。なによりお客さんが見えてこないから、美味しさが伝わってこない。ただアダムのプライドのための美しい料理。
お皿投げたり、食材乗ったまま叩きつけたりのシーンは観るに耐えなかったな。
あと、みな普通に喫煙するもんなんですね。ごめんなさいわたしシェフに幻想抱き過ぎかもね。シエナ・ミラーもタバコ吸ったその口のまま、ソースの味見して、美味しい、とか。こういうシェフは信用ならんかなあ、個人的には・・・。
対照的に、調理人たちが休憩時間に囲むまかないがとても美味しそうだった、なんだかよくわからない料理だったけど。あとラリラリで目覚めた朝に元同僚が作ってくれたオムレツとか。リリーちゃんにつくってあげた薔薇のケーキとか。
やっぱ「うん美味しい」って言葉かわしながら笑顔で食べてるシーンがあると、その美味しさ、伝わってくるよねー。「三ツ星フードトラック」のがっつり男飯が異常においしそうに見えたのはそれなんだね、きっと。
ブラッドリー・クーパーのキレキレ演技は絶品だし、このひと、パーフェクトなルックスの中でちょっと目に狂気があるところがこの役にとても合っていた気がする。カリスマを感じさせる。けど、最後まで好きになれないし、実際お近づきになりたくないキャラクターですけどね。
そうか、この雰囲気って。カリスマ鬼コーチに檄を入れられてグラウンドに散っていく体育会系部活のイメージか。。ブラッドリー・クーパー主演のスポ根ものと見れば納得だ。「ウィ!シェフ!」
真っ白な厨房やレストラン、コックコートが美しい。食材の色鮮やかさが映えます。映えますがカタログをみているような味気なさ。
こんな殺伐とした汗と怒号のど根性ムービーなんだけどダニエル・ブリュールのいかにも二代目風な鷹揚としたたたずまいが癒しでしたな。なんかソレっぽい雰囲気がチラホラあったけど、ソレって解釈で正しいのかな?
そのトニーのキャラクターの背景も、シエナ演じるシングルマザーの背景も、あとアダムのバリの件も、もう少し描けたらもっと入り込めただろうに、みんな「訳あり」ぐらいな描かれ方でおわってしまい、ちょっと残念。
あと!こんなところにユマ・サーマン、そしてお忙しいアリシア・ヴィキャンデルちゃんが!これはノーチェックで。なんでしょう友情出演?