あまのかぐや

クリーピー 偽りの隣人のあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

クリーピー 偽りの隣人(2016年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

ものすごく気持ち悪い作品でした。

香川照之の怪演は、想定の範囲内でしたが、予告篇で娘(「ソロモンの偽証」のあの子だ!)が「あのひとほんとうのおとうさんじゃありません」って言ってるから、まぁそういう話かとは想像できちゃいます。あのキャストで言ったら香川さんしかホンボシありえないじゃないですか。そこまで想定の範囲内で、どうしてこんなに冷え冷えする、想定を超えた怖さがあるんでしょうね。

香川さん以上に、終始「セリフを語ってる調」の西島さん、竹内さん、西島さんの元部下の東出さん、そして警察本部の偉い人役で笹野高史さんが後半出てきた。いつもなら安心安定のほっこりする笹野さんなのに今回の役、どこか行き当たりばったりな行動や思考の読めなさにハラハラ。

みんな芸達者な人ばかりなはずなのに敢えてセリフ言ってるような違和感も。下手なの?もしくはものすごい裏をかいた巧妙な演技なの?という不気味さ。

引っ越してきた西島竹内夫妻。ご挨拶にご近所を回るという常識的な行動をみせる相手はどうやら難しいご近所さんたち。香川さんち以外おもうひとつのうちも介護生活だか言ってましたが通常のご近所付き合いなんてできなそうな雰囲気。でもちょっと待って。あとでわかることだけど手土産に手作りのチョコレートとか、まだ知り合って間もない家にシチューのおすそわけ、しかも「昨日作って余ったから」ときたもんだ。料理上手という設定だったけど、わたしの常識の範疇からするとその無神経さがなんだか不気味だった。

怪しいとおもった家に一人でずかずか入って行ったり(それを言ったら警察関連の人もだよなー)竹内結子もどのタイミングでほだされたんだか、ちょっとそのへんの時間の感覚がない。それ以前にやはり初対面から会話がうまく成立しないと不審がってる相手に無防備に近づきすぎだわ。

無神経といえば、西島さんの無神経さも殊更に強調されていたような気がする。大学の講義でシリアルキラーの話をしていた「女性を監禁強姦してヘリで森に連れて行き放し、ライフルで狩猟のように殺害した、アメリカらしくダイナミックですね、(笑)・・・」あの表現と笑いにゾッとした。なんだこいつ・・・。

それから前半で取り上げられる「日野行方不明事件」の生き残り少女に、もう警察関係でもないのに東出くんと会いに行って尋問じみた行為をすること。これあきらかに東出くんは警察としての業務規定とか逸脱してるし、西島さんも女の子に対して聞き取りすること「趣味ですから」と・・・デリカシーなさ過ぎて、ドキドキした。日野事件の家族が死んでいるのがわかってもなお少女のうちに押しかけ、半ば暴力的に詰問する「あなた人間ですか?」

もー、すべてが不気味だし、おかしいし、「心がない」。香川さん以外もちょっとどこか狂ってるとしか思えない。自分の理解の範疇にない人間たちのなんと不気味なことか・・・マックスだけがしっぽふりふり感情的に駆け寄ってくる。唯一信じられるなぁと思いました。

もうああなってもサイコパスだかソシオパスだか分からないけど香川さんに好き放題引っ掻き回されても、しかたないぐらい、隙だらけ穴だらけな隣人。きっと日野市事件で乗っ取られた家族も、西島竹内夫妻ぐらい隙だらけな家族だったんだろう。

これ、映画館で観たら怖かっただろな。血とか生々しいもの見せるのではなくあの画面の昏さと静けさが怖い。カーテンとか庭の茂みとか、そんなんが動くだけでもハラハラする。すごいな、これ。うっかりお腹も鳴らせないよ。

あの重そうな横開きの鉄の扉の監禁部屋は、レザーフェイスさんのお宅っぽかったね。
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