ゆーあ

レディ・プレイヤー1のゆーあのネタバレレビュー・内容・結末

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます


金!金!!金の力を感じて最高!!

ゲスな表現ですが、これは純度100%の賛辞です。ちょうど映画化が公表された頃、友人から勧められて原作『ゲームウォーズ』を読んだのですが、数多の有名キャラクターがバーチャル世界で夢の共演を果たすこの物語は、最も映像化を望む一方、権利的な側面から「映像化不可能」な作品であると感じていました。それを見事に実現した圧倒的な資金力と信頼!近い将来ハリデー的人物が現実に現れるとしたら、それはまさしくスティーブン・スピルバーグだろうと思います。

バットマン、キティちゃん、ガンダム、ストリートファイター…見渡せば目が足りないほどの80年代ポップカルチャーのおもちゃ箱たる映像は、それらの元ネタをすべて知らなくても時代を席巻した大きなエネルギーを感じてワクワクします。ハリデーのイースターエッグを探すガンター達が挑む3つの試練は、原作から大きくアレンジされ圧縮されていたものの、見ごたえ満点でした。第一の試練「レース」はシンプルなルール故に、満載のキャラクターとゲーム的な面白さを直感で味わうことができて、『レディ・プレイヤー1』とはこういう映画だ!という自己紹介をガツンとかますスタートダッシュを切っています。
第二の試練「VRシャイニング」は、あのホテルがそのまま移築されたような再現度!まるで映画の中で映画を見ているようで、この多重構造的な没入感がオアシスの魅力なのかなあと、肌で感じました。恐怖の予感に緊張(笑)。まさかレディプレでホラーを見るとは予想してなかったから、心の準備ができてないよ!ここをプレイするIOIの職員は阿鼻叫喚でしたが、そうだよね~~私だったら失禁すると思う。
第三の試練は、試練そのものより、この映画最大の見どころであるガンター連合軍VSIOIの大決戦と、現実世界で展開するサマンサの潜入任務にドキドキして、興奮と緊張感が良い塩梅でした。「俺はガンダムで行く!」は今年の映画流行語大賞ノミネート間違いなしの名言!このセリフとアイテム表記が日本語だったり、メカゴジラのBGMだったり、アイアン・ジャイアントが溶岩に沈むときの『ターミネーター』オマージュだったり、この大決戦には小ネタに溢れんばかりのリスペクトが詰まっていてとても良かったです。
勝利のカギとなる1UPコイン。この入手経路は原作において私が一番好きな部分です。シナリオ上行く必要のない場所ややる必要のないサブイベントをクリアすると最強のアイテムが手に入るという仕込みは、実際のゲームにおいても大好きなので!映画では入手経路が異なっていたけど、起死回生の隠し玉としてこの設定が生きていたことに大喜びしました。

映画の尺に合わせてオアシスの規模が圧縮されている分、『レディ・プレイヤー1』は「青春もの」に分類される映画だと思いました。ハイファイブが早々に、自主的に集合して5人全員でハッピーエンドを迎えられたのは本当に嬉しかったです。若者の情熱と力が錆びついた世界を動かす、夢のある話じゃありませんか!サマンサのヒロインとしての魅力はもちろんですが、エイチはほんと有能だなあ~。またダイトウは、原作ではいわゆる「ひきこもりのキモオタ」という描写でしたが、映画では身体能力の高い超爽やかイケメンで、現実世界も捨てたもんじゃないなと思いました(笑)。ウェイドとサマンサのキスシーンで、ショウを後ろにやるのも「お兄ちゃん」って感じがしてよかったです。

敵キャラクターのIOI面子も愛らしかったです。ソレントは冷徹な実利主義者というイメージでしたが、パスワードを書いたメモを椅子の横に貼っちゃうガバガバっぷりや、現実/オアシス問わず意外と自分から前線に出ちゃう感じが憎めない。もう、メンデルソーンさん可愛いなあ!また作中で一番共感したのが、IOIの分析チーム。パーシヴァルが第三の試練を突破したときの、職務を忘れて大喜びする様。敵対企業の研究者である以前にまずオタクなので、ステージクリアのその先が見たいよね。超分かる!!特にロングの赤毛ちゃんが、見た目はすごく可愛いのにしゃべり方がオタク全開(知識を早口でまくし立てる)でお気に入りです。

原作では夕飯の食材の注文だけでなく、学校教育や企業活動も全てオアシスを通じて行われており、『サマーウォーズ』のOZの拡大版のような、現実世界を生きるためになくてはならないネットワーク空間でしたが、映画ではそのゲーム性のみを抽出して描いていたので、結果的に現実世界のディストピア感が強まったように感じます。蔓延する厭世観は、冒頭のVR空間に引きこもる集合住宅の住人の様子で嫌というほど感じますが、最終決戦の時、バイザーをつけて街中でシャドーボクシングをする人達にはもはや恐怖を感じました。こんなの社会が成り立たないじゃん…!トドメは「週2日はオアシスを休みにする」というオチで、これはオアシスが所詮「娯楽による現実からの逃げ場」でしかないことを証明してしまい、本当にダメだったと思います。「僕はリアルで大切な友達と可愛い彼女ができた!だからみんなも現実を生きよう!」って?おいおい勝ち組の意見だな!ハリデーは確かにオアシスを「逃げ場」だと言い、そこに籠ることを選んでモローと決別したことを悔やんでいたけど、同時にオアシスがあったからその絆は消えずに残った。オアシスは仮想現実だけど、そこで多くの人と共有した喜びや、悲しみや、達成感は現実の糧になる。ハリデーのイースターエッグ探しは、この『レディ・プレイヤー1』という映画はそういうことに気づかせたかったんじゃないのか?プレイヤーを媒介として仮想現実と現実は地続きであり、その共存を模索するのかと思いきや「あんた!ファミコンばっかしとらんと外に遊びに行き!」とカーチャンの説教とともにコンセントを引っこ抜かれたもんだから呆然ですよ。自室を出るハリデーの「私のゲームを遊んでくれてありがとう」という言葉には前向きな想いも込められていたように感じたのにな…てのは、演じているのが私の涙腺を破壊することでおなじみマーク・ライランスだから?もしそうなら、映画化にあたりハリデーのアバターにマーク・ライランスを選んだスピルバーグの采配勝ちですね(笑)。

権利の壁を越えて沢山の実在のキャラクターを共演させた『レディ・プレイヤー1』。私は2Dで鑑賞したのですが、3Dや4DXならもっと臨場感たっぷりにオアシスを体感できるだろうなと思います。将来はVR映画鑑賞とかも広まってくるのかな。ソフト面でもハード面でもスクリーンと現実の境を曖昧にする本作は、近未来の映画のカタチを予感させました。そしてその先頭で旗を振るスピルバーグの姿を見て、やっぱり彼は映画の申し子だ!と確信しました。
ゆーあ

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