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王となった少女の小のレビュー・感想・評価

王となった少女(2015年製作の映画)
3.4
「フィンランド映画祭2016」にて鑑賞。17世紀、6歳で即位したスウェーデン女王クリスティーナの半生を描いた伝記映画。なぜフィンランドで映画を製作するのかと言えば、彼女が当時スウェーデンの統治下にあったフィンランドの大公(君主)を兼ねていたから、って世界史に詳しい人には当たり前かな。

王子のように育てられ、物凄い勉強好きな学者肌だけど、凄腕の政治家でもある。局地的なプロテスタントとカトリックの争いに端を発し、ヨーロッパ中を巻き込んだ三十年戦争を終結するヴァストファーレン条約を、周囲の反対にも意志を曲げず締結。このとき22歳。

23歳の(1649)年には、心酔していた哲学者デカルトを呼び寄せた。朝寝の習慣があったデカルトは、極寒のスウェーデンの冬に朝5時から彼女に講義を行ったせいか、程なく肺炎にかかり1650年2月に亡くなった…。

デカルトが亡くなった年の10月に、何をいまさらな戴冠式を行い、翌年には退位の意志を示したとされる。さすがに説得され延期したらしいけど、花婿候補だった従兄弟のカール=グスタフを養子にして、1654年に王位を譲る。

男装し、花婿を拒否したレズビアンとしても有名。28歳で退位したのは、結婚したくなかったためということらしい。

スウェーデンはプロテスタントの国で、父親はカトリックと戦って戦死したのだけれど、デカルトの影響か、1655年にカトリックに改宗した。晩年はローマに定住し、学問、芸術、文学に没頭し、アカデミーを創設した。

良く言えばきわめて意志の強い、悪く言えばかなりのワガママな、ナカナカ個性の強い、極めて映画向きなキャラクター。とはいえ、単に半生を描いても映画にならないので、女官エバ伯爵夫人との愛の物語がメインとなっている。

エバ婦人に色目を使い、服を買ってあげ、キスをして…。周囲がエバ婦人を引き離すと、もの凄い絶望ぶり。さらには結婚式にも乱入し…。

デカルト先生はスウェーデン滞在中に『情念論』を出版するけど、自らの“情念”に苦しむ彼女の心の支えがデカルト先生のように描かれている。なので、先生が亡くなったときは絶叫に近い号泣になるんですな。

女王役の女優さんがとても良かった。声は低くドスが効いているし、見た目にも威厳があり本物感が出ていた。情念を発揮するシーンもナカナカ。

しかしこの女王、政治手腕は凄かったのかもしれないけど、周囲の人は大変だっただろうなあ。17世紀、日本は徳川家光の時代にあって、タブーと思われることやり過ぎみたいな。こんなロックな女王がいたとは、勉強になりました。
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