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メッセージのBeSiのネタバレレビュー・内容・結末

メッセージ(2016年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

突如として飛来した巨大宇宙船。知的生命体と意思疎通を図る為に軍に雇われた言語学者ルイーズは、"彼ら"が何を伝えようとしているのかを協力者のイアンと共に探っていく。まずこの映画の素晴らしい点は、SF映画でよくある生命体の飛来までの経緯や攻撃の描写が一切無く、独特なフォルム(ばかうけに見えてしまうという人の気持ちめちゃくちゃ分かる。)を持つ宇宙船の息を呑むほど美しく静かな雰囲気をより幻想的にする為に、最良の角度、画角でその雰囲気を存分に醸し出しているところだ。この作品で肝となる生命体のイメージの設定からも、これらの描写には納得がいく。そして一番のポイントとなるのは、主人公ルイーズの"未来"だ。言ってしまえば"彼ら"が伝えたい事は、ルイーズは後に協力者であるイアンとの間に子供を授かるが、幼くして病気で亡くなってしまう事実が確定している事。自分のこれから先の人生が分かっている状態にあるのだ。"この先の人生が見えたら、選択を変える?"もし自分が聞かれたらどう答えるだろう。自分の立場で考えてみた。おそらく"ありのままの未来を受け入れる"と答えると思う。仮に選択を変えたとして今まで以上の幸せを手に入れた時、それはもしかすると"たった今"掴んでいる束の間の幸せではないかと考えるからである。不幸は人生を歩むうえで必ずつきまとうものだから、自分の未来の全貌が分かるとなれば、限りある"今"を生きる事が一番の幸せになるのではないかと思った。そんな事を考えるうちに切なくて涙が出た。これこそ最も"人生観"について深く考えさせられる一本に値するだろう。ドゥニ・ヴィルヌーヴの切なくも美しい傑作。素晴らしいです。
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