140字プロレス鶴見辰吾ジラ

カルテル・ランドの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

カルテル・ランド(2015年製作の映画)
4.0
ありえないほど真実…

メキシコの麻薬カルテルと自警団の対決の裏側を描くドキュメンタリー。

ショッキングな映像が映り、被害者のインタビューは生々しく、我々の世界観では想像が追いつきません。冒頭の麻薬製造シーンの乱雑さ、そしてそれがラストシーンで我々の脳裏に強い一撃を食らわせる。

自警団の活躍を描くドキュメンタリーではなく、自警団とそのリーダーの光と影にしっかりと踏み込まれた気合の入った力作で、インタビューの言葉の中に常に我々にも正義と悪のジャッジを迫らせてくる。

現在公開中のシビルウォーのような爽快さとは真逆であり真に善悪のボーダーラインを問う。国境線は地図にも目にも見えるが、善悪という精神世界のそれを可視化することはできないのだと痛感させられる。

同じくメキシコ麻薬戦争を描いた、ドゥニ・ビフヌーブ監督の「ボーダーライン」同様、この世界を目の当たりにしたところで、戦慄するだけで我々には無力なのだと虚無感を感じさせられ、今作のラストシーンがそれを痛烈なメッセージとして締めくくる。


我々のこの場所では無関係だろう。いや無関係だろうか?
形は違えど善悪のボーダーラインを問うことは、すぐ近くに今ここにある危機としても例えられる。
自警行為は?政府の対策は?終息見込みは?この行いは正義となるか?根源は断てるのか?犠牲になったものたちは?

ヒーロー映画のような勧善懲悪な落とし所は常に求められ、常にない。