垂直落下式サミング

デッド・オア・リベンジの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

デッド・オア・リベンジ(2015年製作の映画)
2.2
復讐を頭よさげな文芸として描くと『処女の泉』になるし、エンターテイメントとしての見世物性を強調して描くと『鮮血の美学』になる。本作はレイプリベンジというジャンルのちょうど真ん中辺りを掠めていった惜しい作品だ。
というのも、地雷を踏んでしまっために身動きがとれなくなるという恐怖や焦燥が単に奇抜さを狙ったギミックでしかなく、前半はカップルがひたすらオヤジにいじめられるだけ。オヤジの嫌な感じの詰め寄り方は嫌悪感を感じるいい演技なのに、舞台の移動も立場の逆転も起こりようがなく、彼等の間にはこれといったスリリングなドラマは展開しない。本当につまらなくて、面白くなくて、楽しくない。
『発情アニマル』のように「①登場人物説明」「②辱しめられる」「③復讐開始」と、ハッキリとした演劇の三部構成に則っていないため、語りが辿々しく思える。
後半で主人公が饒舌にレイプ犯の家族を追い詰めてゆく場面はなかなかリアルで見ていられなかったのだが、ここの鬱積の解放のためだけにかったるい前半を観なくちゃいけないのは正直コスパが悪い。
ドラマ部分については良くなる余地がありそうだけど、なんか中途半端で生煮えな感じ。例えば、地雷は女の不貞に怒った友達が主人公を陥れるために仕掛けたダミーだって言うんだけどさぁー。
地雷ってのは、踏んだ瞬間に爆ぜるんすよ。カップルが地雷というものの性質を知らないにしても、じゃあそもそもなんでそんな危険なものを民間人が持ってるんだって、イタズラを疑わないのはどうにも頭が悪い。
物語を進めるために思考の選択肢を奪われたキャラクターはみていて不憫になる。土台設定が無茶なので、会話劇に自信ニキが演出なり脚本なりを手掛けたら化ける作品なのかもしれなませんけどね。いやー、つまんなかったな。