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海よりもまだ深くのminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

海よりもまだ深く(2016年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

過去に一度文学賞を取ったきり泣かず飛ばずの売れない小説家で探偵(興信所)勤めで生計をたてている主人公が、台風の日に実家で母親と別れた妻と息子の四人で一夜を過ごす話。

すごい映画!
派手さは全くなく、起伏のあるストーリー展開もなく、大仰な笑い要素があるわけでもなく、予算もそこまでかけていないと思われるのに、観ている間ずーっと面白いという脅威の作品。
日本映画がつまらないという人はぜひ本作を観て欲しい。

この作品の美点はとにかく自然体なところ。過剰な芝居や大げさな台詞回しは一切ないのに出番少なめな脇役にいたるまでの登場人物全員が魅力的に見えてしまう演出力と役者陣の演技は圧巻。

親子関係を優しい視点で丁寧に描いた映画。主人公のダメだけどどこか憎めない人柄は父母譲りだし、主人公の息子のちょっと変わった性格や文才に優れたところなどは主人公に似てるところなどは本物の家族に見えてしまう。血と親子の絆を感じてしまう。主人公の姉役の小林聡美もやはり樹木希林に性格が似ているし。
樹木希林パワーが凄まじい。
あの独特だけどこういうお母さん日本にたくさんいると思わせるキャラクターは素晴らしいし、何気無い会話の中に名言がたくさん含まれていて泣けたり笑かしてくれたりする。離縁後なのに元妻や息子に慕われるのも納得の人間力だった。
同監督作の「歩いても歩いても」とキャストと設定がかなり被っているが、自然体な良さを残しつつ、あちらよりもコミカルで、目立たないけど緻密な伏線が張られていて終盤うわっとなる。

家族以外では池松壮亮演じる主人公の職場の後輩が良かった。主人公のダメさを分かってるのに慕うあたりは主人公の人柄の良さを感じさせてくれる効果があった。
あと、主人公の父親な故人で本作には一切登場しないのに、他の登場人物の会話の中から人物像が浮かびあがってきて、尚且つ観客が好意まで抱いてしまうような構成は見事。桐島部活やめるってよの桐島みたい^_^

台風の夜の公園で息子を中央に挟んで阿部寛と真木よう子が三人で並んで座る姿が本当に微笑ましい。息子役の子は素朴で可愛らしいし、なんで離婚しちゃったんだよー、息子のために復縁しろよーと心の中で叫んでました。
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