ゆーあ

ザ・コンサルタントのゆーあのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・コンサルタント(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ベン・アフレックといえばバットマン!その直近のイメージから、この『ザ・コンサルタント』も表はやり手のエリート会計士、裏は必殺仕事人というパーフェクトヒューマンの物語だと想像していました。しかし実際は大きく異なり、観賞後はアクション映画を観た興奮よりも、ほろ苦い家族の繋がりを反芻しなが帰路につきました。

物語は、一人の高機能自閉症児と、彼を私設養護学校に預けるか相談する家族の描写から始まります。この自閉症児こそ、後のベンアフ演じるクリスチャン・ウルフ。大人になった彼は会計士を生業とする傍ら、裏社会の金を操り、磨き抜かれた格闘と射撃の技術で殺し屋としても界隈に存在感を示す。…でも物語をなぞるにつれ、決して彼は「いくつもの仮面を被った謎の男」ではなく、一貫した「クリスチャン・ウルフというただの個人」という印象が強くなりました。会計士の仕事をしているのは数字に強いからで、裏社会に関わっているのは信頼する人間に勧められたから。殺し屋稼業はこだわりが強く、一度始めたら終わらせるまで気が済まない性分に合う。社会性を学んだことにより裏稼業のことは大っぴらにすべきではないと分かっているだけで、彼自身は裏表なく、「これら全てを仕事にすることが、自分にとって生きていくためにぴったりな方法だから」として取り組んでいるだけのように感じました。そこには何となくもの寂しさも感じます。

そもそも何故ウルフがこんなに高い戦闘能力をもっているのかというと、軍人の父の教育方針によるもの。特性を認めてくれる環境で生きるのではなく、自分で自分を守る術を身に着けるべきだとする父親は、ウルフを養護学校には預けず、弟と一緒に格闘術の訓練を受けさせます。この荒療治のおかげで今ウルフは自立して生活できているわけですが、果たしてそれが幸いだったのか…ウルフの幼少期については作中のところどころに挿入され、それによって観客は人となりを知ると同時に、感情をうまく表に出せない彼の心内を推測するわけですが、全てに切なさの影を感じました。

この弟(ブラクストン)が敵対勢力のリーダーで、仲間が全て撃退された後にウルフと一騎打ちになるのですが、まさかの武力決着はナシ!はじめブラクストンには暗殺ターゲットを脅す時など、ひょうきんな口調の中に容赦の無さをにじませる、底が見えない恐ろしいプロのイメージがありました。しかし撃退対象が兄と分かった瞬間、一気に顔色が変わります。ここのシーン、演じるジョン・バーンサルさんの表情がすっごい!一瞬でプロ傭兵の顔を崩し、動揺・喜び・安堵・怒りがゆらめく「家族」の顔をのぞかせる。その想いを拳と言葉でぶつける様はまさに幼い弟で、実際の年齢の時には表せられなかったそれらを溢れ流す様はとても魅力的でした。ラストバトルで決着をつけないまま終わることにはびっくりしたけど、それによって本作の真のテーマは人間同士の繋がりなんだなと確信しました。

他にウルフと関わる人たち-ディナ、キング、メディナなどの背景も観客が心を寄せるに充分な程しっかり描かれていて、いかにこの作品が人物を大切にし、それによって成り立つドラマであるかを実感しました。特にヒロインのディナは「どこにでもいる普通の女の子」って感じで好感度◎◎ 彼のトレーラーに飾ってあるポロックの絵を見て彼を信じることに決めたくだりはとても良かった。絵画の価値だけでなく、芸術に興味があるんだという内面への共感を得たからなのかなと思えて、好き!

キャラクタ―に関する非常に丁寧な描写のために、ローコンテクストな感じも抱く作品ですが、彼ら一人一人を知るほど没入感が増し、観賞後の余韻が長く残る映画だと思います。

最後になっちゃいましたが、アクションもしっかり見ごたえあります!ゴリッゴリの重量級ベンアフによる、ジョン・ウィックばりのキルカウンター高速回転系ガンアクション!絶対負けないだろう」という安心感に寝転がって見るアクションシーンは心地いいわ~
ゆーあ

ゆーあ