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婚約者の友人のRのレビュー・感想・評価

婚約者の友人(2016年製作の映画)
4.3
こっこれはきつい…最後マジかよってなりました。質素でありながらゆったり優美な白黒映像のなか、哀しき恋愛残酷物語が展開します。舞台は第一次世界大戦後ドイツ。愛する婚約者フランツを戦争で殺されたアンナは、フランツの両親と暮らしている。ある日、フランツの墓に花が供えられているのを見つけたアンナは、翌日お墓でフランス人青年アドリアンに出会う。彼は敵国同士であるにも関わらず、フランツの良き友人であったらしいのだ。線が細く中性的でバイオリニストのアドリアンと、いかにも朴訥で人の良さそうなフランツが楽しそうに触れ合ってるフラッシュバックを見て、あーなるほど、ゲイカップルやったんやね、と想像する僕。アンナはそんなことには気づかず、少しずつアドリアンに惹かれていき、フランツの両親も最初はフランス人ということで拒否反応を示すが、やがて、フランツに対するアドリアンの真情を感じ、打ち解けて仲良くなっていく。ところがある日、アドリアンは、ボクは嘘をついていたと、アンナに真実を激白する…。この時点で、かなり大きく予想を裏切られ、あー、なるほどー、そういうことやったのね、となります。アンナは激しく動揺、それに耐えられなくなったアドリアンはドイツを去り、パリに帰って行く。これで大体映画全体の半分くらい、ここから、アンナの嘘とフランツの真実とフランツの秘密が複雑に絡み合ったミステリアスな展開になっていく。丁寧な描写が淡々と続いていく本作は、他のオゾン作品にあるどこか硬質で頑なで執拗な感じが、女の愛というやわらかな(印象を与える)ものに転換されているので、オゾン苦手な人も比較的見やすいかも。白黒が何回か俄かにふっとカラーになるシーンでは、硬く冷めたものが一気に柔らかさと温かみを帯び、不思議な優しさと高揚感を感じさせます。また戦後ドイツを訪ねてくるフランス人と、戦後フランスに訪れるドイツ人と、両面を描くことで、戦争のもたらす分断と分かり合う難しさを無理矢理なお説教テイストなく鮮やかに描いている。そんなこんなの末に、えーーーーっ!!!なエンディングが待っている。これは…キツい……ツラい……どうすることもできひんやん。なんでそれ言ってなかったの……けど、こういうことって意外と人生に多く起こるよね。そして、最後のアレにはクラっときた。幸せになって、とか、あんなん完全クラッシュやろ。けど、切り替えの良さ。強さやね。女の哀しみと強さ。男のアホさと弱さ。とてもリアルで美しく残酷な名作やと思いました。見終わった後もゆっくり心の中で味わいたい作品。てか、ピエールニネ、何たる顔面…。
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