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ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命のminorufukuのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

第二次世界大戦中のポーランドが舞台。
ワルシャワで動物園の飼育員を夫妻は、友人を含むユダヤ人たちが次々と強制収容所送りになるところを目の当たりにする。彼らは動物園を養豚場として使い豚肉をナチスに提供する案を申し出る。しかし、その真の狙いは強制収容所から豚のエサを貰い受ける際に、ユダヤ人たちを強制収容所から連れ出し動物園で匿うことにあった…という話。実際に約300人のユダヤ人を救った夫妻の実話がもとになっている。その動物園は今も開業中とのこと。

やや淡々と語られているものの、歴史的事実を誠実に描いた人間ドラマ。死と隣り合わせのリスクを犯してユダヤ人を夫妻の勇気ある行動には素直に感動できたし、ユダヤ人の悲劇だけでなく、戦中の冬を越せないだろうとの理由から動物たちへの虐殺命令を実行するドイツ軍の姿には憤りを感じた。
この映画を複雑にしている要素として、ダニエル ブリュール演じるドイツ人動物学者のルッツの存在がある。戦前までは主人公夫妻とも親交学者があり、妻の方に友愛以上の好意を抱いているものの普通の友人同士の関係だった。しかし、ドイツがポーランドを占領してからは彼が支配者側となってしまい、ルッツも当時のドイツ同様傲慢な考え方をするようになる。そんな彼の好意をヒロインはユダヤ人救助のために半ば利用し、夫はそんな2人の関係を見て事情を理解しつつも嫉妬する。彼ら3人の関係は戦争が無ければ友人のままでいられたのかなあと、なんだか物悲しい気分になった。そんな彼を単純な悪人に描いていなかったところは良かった。
妻役の女優さんは「MAMA」というホラー映画で観た記憶があったのだが、「オデッセイ」の宇宙船のディスコミュージック好きの指揮官役だったのね。
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