『ナオミ　気持ちよくてとろけそう』。愛があればなんでも出来る→愛は残酷だ。女が車に跳ね飛ばされてコンクリートに頭打ち付ける瞬間と、記念撮影中に刺殺されてシャッターが下りる瞬間と。二人のダンス、由美香の腕は微動だにしない。洗濯物を干すにはちと風が強すぎる、白いシーツ越しに滲む血。シャルマンって喫茶店、あのシャルマン？渋谷駅南口（？）で行き倒れるとこのゲリラ感、周りの人達超心配してるじゃん。本当風呂入ってる間に見られるよね…。

顔面偏差値格差百合ップルよかった。そして面食いの不器量がレズってると自己投影できるという微妙な快楽を発見してしまった。バ美肉ほどおもしろおかしく倒錯できない中途半端な女性化願望ツラい。一方では、部屋の間取りやレイアウトで多重フレームをつくって覗き見るような構図を多用してくるので、自分のなかの夢オタクも壁オタクも喜んでる。ラストシーン、角ハンガーまで徹底された白色と、強風と手ブレの共鳴はよかったが、車事故と記念写真の過激さにくらべるとあまりに凡庸で様式的な流血にズリ落ちる。

学生時代の恋愛に縛られている同性愛者の女性（ゐろはに京子）が、異性と結婚した元恋人（林由美香）に陽動を仕掛けていく。同性カップルの破綻した人生模様を描いている、新東宝配給のピンク映画。国映製作。

「女の魔性により人生を破綻させられる男」の系譜を、レズビアンの物語へと置き換えている作品。独特の乾いたタッチが全編を支配しており、ゐろはに京子の一人称語り（抑揚のないロボット喋り）が、ポジティブな効果を上げている。

女性陣を地に足がついていないフワフワした存在のように描写して、その周囲を取り巻く男性陣が、あれよあれよと煙に巻かれていく。他者となる夫婦（吉行由美＆佐野和宏）を取り込んで、カオス状態に拍車を掛けていく展開もまた刺激的。

中盤部に入ると、性の乱反射現象が殺害行為に発展。「性衝動の波及力」を扱った作劇としては、最良のドラマ展開といえる。まさしく、90年代ピンクのニューウェーブ感覚を堪能することができる逸品。