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空と風と星の詩人 尹東柱(ユンドンジュ)の生涯のTAMUのレビュー・感想・評価

4.1
原題『동주』。戦時下の日本で獄死した朝鮮の詩人の物語。彼は立教大学、同志社大学の留学生でもありました。

この映画、本国韓国では異例のヒットとなり、青龍映画賞最優秀作品賞候補にもなったものの、大手配給では無く、テーマ的に反日映画のレッテルを貼られ兼ねない側面もあり日本公開は期待薄と感じておりました。が。

ありがとうございます。立教大学異文化コミュニケーション学部の皆さんが自らの手で作中の詩を日本語に置き換えるなどの努力を経て、立教大学で日本初公開となりました。

そんな本作。泣ける演出など極力排し、詩を愛するドンジュと彼を追い込んで行く時代(所謂日本軍の締め付けではありますが)を冷静に描いております。

詩を愛するドンジュ。それは平和を愛する気持ちを表現すること。自身の中では戦うということ。そしてそれは母国の言葉で書くことと表裏一体。

しかし時代の流れの中で、詩を書き続けることは難しく。詩を愛するが故に、詩人になりたいという気持ちを苦痛に感じることに。そして、彼の元へも憲兵が。

詩人になりたいことは、あまりにも恥ずかしく、行動が伴う仲間の前では愛国心を隠していることと同意。人の前に立ち、この不条理に疑問を呈する勇気を持つことができなかったことを獄中の尋問の中で悔やむドンジュ。

日本人としては「感動した」と言った、他人事めいた感想を書きづらい作品ではあります。

一方で、好きなことを好きなように出来ない時代があった、だから我々は今の自分たちを見返す必要がある。ちょっと明日からドンジュの分まで頑張ってみようかな、と力付けられる側面もある。

日本の犯した過ちを超えたところにテーマを持った強い作品であったように思います。
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