正統派の良い物語を描きますよ感プンプンの本作。
何やら儒教的な思想教育をされてしまいそうで、避けようと思ったが、どうせこの手の映画が面白いのでしょうと結局鑑賞。
私ごとでは、おじさんのくせに絵のスタイリッシュさであるとか、見たことのないアクションであったり、予想外の展開に感極まったりする性分ではあるが、本作はその点は皆無。
時系列が入り組んだりすることはなく、あっと驚く終盤の展開も無く、そのようなことはありませんよ、と言いたげに全編モノクロ。
で、結局面白いんだよね、これが。
古き良き『赤ひげ』でも見たかのような満足感。本来の人間とは友情とは学ぶと言うこととは、と言った普遍性を描くのであれば、派手な演出はおろかカラーさえも不要。
基本的なことの大切さが滲み出ている。
特に新しい知識を得たい、と見終わった誰もが思うであろう本作の聡明な志しには敬意を払う。
『ドンジュ』、『パクヨル』、など個人の精神性を映しだすイ・ジュンイク監督の真骨頂。
過去作同様、歴史に沿った内容で見終わった後、見た内容について調べたくなる作品て、お土産付き感があって好き。
そして何よりドラマに説得力を与え出演陣が予算をほぼ出演料に使ってしまったのではと思ってしまうほど超豪華。
主演は黒山島に島流しにあった高官に泣く子も黙る名優ソル様ことソル・ギョング。島で出会う向学心旺盛な青年に我らがハンくん（from『未生』）ピョン・ヨハン。
もう2人の”その人”感はヤバいね。特に反骨心旺盛なピョン・ヨハンの精悍な顔つき、徐々に打ち解けてくる姿にグッとくる。
凄いなー、と感激したのはチョ・ウジン。個人的にはチョ・ウジンと言えば賢いインテリか、賢い悪いインテリなのだが、本作では初めて見るおバカなインテリ。
コメディリリーフとも言える珍しい役どころなのだが、やっぱり凄いぞチョ・ウジン、知的さが滲み出る顔立ちで、唯一と言っていい笑いを誘う役どころを見事に演じる姿に感激w
続いてソル様の弟役、こちらは珍しく面白みのない生真面目な役どころのリュ・スンリョン。キャストを知らないで見てたからかもしれないが、助演にリュ・スンリョンとかメチャクチャ豪華じゃね、とテンション上がるw
面白くないリュ先輩は声の良さが際立ち、字幕を読んでるだけなのに言葉の説得力に痺れる。
豪華さの一角、推しのキム・ウィソン先輩が鉄板の憎々しい上官を演じる点も推したいし、『寄生虫』の地下おばさんことイ・ジョンウンさんのいじらしさが愛おしいが、更にグッと来たのがリュ・スンリョンの腹心を務めるカン・ギヨン。来てる？
ダメエリートの専門役者感出てきて、その軽薄さに好き感が止まらないw
最後にマニアック情報。その昔、K-POPアイドルグループTINY-Gとして活躍し損なったが、ドラマ『応答せよ1994』でブレイクしたミン・ドヒ。
本作では、ピョン・ヨハンの幼なじみ。着実に
キャリアを積み上げて、この重厚なキャストに入って個性を出す姿たるや胸が熱く、今度はカラーでお目にかかりたい！
