140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ありがとう、トニ・エルドマンの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

4.3
”逆上がりの神様”

笑った!泣いた!
泣いた!笑った!
心の奥の方にズーンとくる。
大人になってわかる親の尊さ。
大人になって感じる親の愛情。

そのときになって気が付く不甲斐なさ・・・

傑作です!もう1度言います、傑作です!!
160分超えの上映時間に後ずさりしそうになりましたが、実はこのドキュメンタリックに、リアリティを持って、そして時間をともに過ごすからこそ、ひしひしと伝わる親の愛と尊さがあります。

冒頭の郵便配達にイタズラを仕掛けるシーンのドキュメンタリー調のカメラワークから、登場人物のセリフに至るまで拘りにうていることがうかがえる演出。そして、本当にドッキリを仕掛けられているのではと思うほどの登場人物のカットインや驚きのリアクション。父親の暴走気味のイタズラの数々にこちら側は笑ってしまうが、当の本人は堪ったもんじゃないと言えるヒロインの表情の緊張と緩和。実は隙がなく洗練されているから、溢れてくるモノは相当大きいものになります。

父娘の愛情を演出過多になってしまえば、陳腐な言葉だけのハートフルドラマになってしまいますが、ここでドキュメンタリックな手法が功を奏して、最小限のエモーション変化を撮影と演出とそして役者の抜群であり自然な演技により、本当にあったことのように振る舞い、描いています。

さらに、中盤のトニ・エルドマン登場ドッキリから、画面端にいつエルドマンが出てくるかというワクワク感と緊張感、そしてエスカレートしていくエルドマン式コーチング術とイタズラ。クライマックスは本来の意味で人生のコーチングを娘に行い、それが予想の斜め上で実を結んだのであろう、ハチャメチャな誕生会シーン。ここは客席から何度も笑い声が上がり、私自身も爆笑です。そして登場する飛び道具。これの破壊力が凄すぎる。そして何よりこの振れ幅から、父娘の愛情を過去から遡り現在へと紡いでいたんだと思う感涙シーンへ。私も泣きました。泣きました。そして、エモーション演出をズラして笑いを取ることも忘れていない徹底ぶり。

160分超えは長かった・・・
でも充実した長さだった・・・
そう思いながら、無邪気な父の純粋な愛情と不器用で凝り固まった娘の氷の城が温かい春を迎えていくハイライトを思い出すと、また胸にジーンときて涙が流れてしまいます。

この現実がおぼつかない感覚は、岩井俊二監督の「リップヴァンウィンクルの花嫁」の結婚式のシーンや、ジョン・カーニー監督の「シング・ストリート」の歌の魔法のようなシーンに、実は寄り添われていて、愛情をもらってたのだと思い返せる思い出であったのっだと思います。

ラストカットは何とも言えない感情が湧き上がります。

本当に素晴らしい!今年ベスト級!!