小

パーソナル・ショッパーの小のネタバレレビュー・内容・結末

パーソナル・ショッパー(2016年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

映画を集中して観るには1日1本、頑張って2本とわかっていても、休日になると電車代等のスケールメリットを最大限享受しようと欲張り、3本、4本と観てしまう貧乏性。特に14日はTOHOシネマズディなのでなおさら。

ということで、この日3本目の鑑賞で、はじめのうちウトウトしてしまった。けれど、その後の展開から察するに、主人公の女性モウリーンと亡くなった兄(双子だったらしい)との霊的なストーリーをメインとしつつ、彼女の仕事がらみでのサスペンス・ストーリーを上手くあわせた内容かと。

ゴースト映像が出てきた時点でナニコレ感が強まることは否めないのだけれど、まあ、霊的なものはモウリーンの心象風景を表現しているのかもと思えば、何かに囚われているモウリーンの解放というテーマで一貫した、なかなかしっかりした物語ではないかと。

パリで、忙しいセレブに代わって服やアクセサリーを買い付ける「パーソナル・ショッパー」の仕事をするモウリーン。宝の持ち腐れと誰もが思う抜群のスタイルと美貌、美的センスを持ち、彼女もまた、変わりたいとの願望を内に秘めている。

モウリーンには外国(中東方面だったかしら)で暮らす恋人がいて、こっちに来ないかと誘われている。行きたいのはやまやまな彼女だが、兄とのことがあるから、と。

モウリーンと兄は、互いへの愛情が強く、また霊感も強い。その兄と生前、先に亡くなった方があの世からサイン送り、生きている方がそれを受け取るという約束した。モウリーンはその約束を果すためにパリから離れられないでいる。

つまり、モウリーンはいつ現れるかわからない兄のサインに囚われ、仕事でも、私生活でも自分の欲望を抑圧している。これって、幸せじゃないよね、なんとかしなくっちゃ、というお話。

そんなモウリーンが殺人事件に巻き込まれるのだけれど、それが彼女をなんとかしてくれることになる。

殺人事件の真相は次のよう。モウリーンの雇い主であるセレブを殺したいと願うセレブの恋人が、兄のサインの件を知り、それを利用して、モウリーンに殺人の罪を着せようとする。

セレブの恋人は、海外版のラインを使ってモウリーンを操ろうとするのだけれど、モウリーンがメッセージの謎の送信主のことを、ひょっとして兄?と本気で思っているに違いない、と思えるかどうかが、この物語に入り込めるかどうかの大きなポイントではないかと。

私はといえば、いくら何でも亡くなった人がスマホにメッセージを送ってくると思うかなあ、という気がするけど、前半をじっくり観ていれば、ひょっとして兄?と思ったとしても、自然に感じることができるかもしれない。だから寝落ちするな、と。この点が自分の残念なところ。

まあ仕方がないので、ここはスルーするとして、メッセージに導かれるように、モウリーンが欲望を解放していく様子がたまらない。モデル体型の美しい姿を惜しげもなくさらしたかと思えば、シャネルの衣装を身にまとう。そして興奮を抑えきれず…、みたいな。禁止されるほどやりたくなるカリギュラ効果がいかんなく発揮され、観ている方もスッキリ、かな?

話がだいぶそれたけど、殺人事件に巻き込まれショックを受けたモウリーンは、もうパリにはいられないと、恋人のもとに向かうことを決意する。これこそ怪我の功名というべきか、もう兄どころではなくなってしまったのですな。

でも、兄の呪縛はそんなに甘くない。旅立つ前のパリで、観客に「モウリーン、うしろ、うしろ」みたいな姿を見せつけ、不穏な空気を漂わす。

とはいえ、兄は愛する妹にやっぱり優しいのだ。恋人の滞在先に着いたモウリーンに、ついにサインを送る。そして言う「オレがいるなんて、気のせいだよ」と(実際には、ドン!ですが)。モウリーンは兄から無事解放され(たのかな?)、お話はおしまい。

霊的な件はアレだけど、結構好きな物語だったかもしれない。寝落ちしたことが重ね重ねも悔やまれる。

●物語(3.5×50%=1.75)
・ポカーンかもしれないけれど、根本的にはいい話。寝落ちしなければ、もう少し高評価かも。

●演技、演出(5.0×30%=1.50)
・日本の女優さんにはできないクリステン・スチュワートの演技にオジサン釘付け。女性は高級ブランドの衣装や小物がたまらないのかな。

●映像、音、音楽(3.0×20%=0.60)
・ゴーストがなかなか本格的。それがかえって…ではあるけれど。
小