クレセント

ベロニカとの記憶のクレセントのレビュー・感想・評価

ベロニカとの記憶(2017年製作の映画)
4.2
人は人生を語るとき、過去を装飾し都合よく編集する。長生きすれば異を唱える証人も減る。それは事実というより物語だ。自分を納得させるために書き換えた物語である。私はノスタルジーという病に取りつかれていたのか。確かに若かりし日の感傷はある。娘が生まれたころのことを思い出した。学生時代の友人たち。一度だけ踊ったことのある女。籐の花の下でひそかに振られた手。私の人生に起きた出来事。その幅の狭さ。私は失うことも得ることもせず、傷就くことを避け、それを自己防衛と呼んだ。君と私の人生は、一時期その歩みを共にした。今振り返ると短い間であったが、驚くほど心を揺さぶられる。君のその後を知らずにすまなかった。教えてくれていたらと思うが。いや教えてくれたよね。。。

今我が人生を振りかえると、その時々がまるで走馬灯のように脳裏によみがえる。このフィルムはそうした掛けがえのないあの日あの時を見事に蘇らせてくれる佳作。それが十分にわかる年恰好になったということなのだろう。立て続けにシャーロットを観る機会に恵まれたが、その謎めいた佇まいは今も変わらない。
クレセント

クレセント