八木

哭声 コクソンの八木のレビュー・感想・評価

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
3.6
韓国本国で評価の高い作品が日本で買われたとき、ほぼ外しがないので、期待して見に行きました、が思った映画とは少し違った(別に良いも悪いもなく)。違ったこととはまた関係なく、自分とは少し合わない作品だった。
この映画はオカルトホラーに踏み込んでいて、「悪霊」がキーワードになってくるのですが、そうなってくると作品上「悪霊がいる」と納得する環境について、自分はどうしても気になってしまうのです。例えば、剣と魔法の世界観において、呪いだ占いだと言われれば「あるのだろうな」と納得しやすいのですが、目の前にいるどう考えても人間にみえるものを指して「悪霊だ」といった場合に、「はい、これは悪霊です」と認めた人がいたら、それはもうこの世でいう狂人となってしまうように思うわけです。そして、登場人物が主に狂人だらけになってきた場合、舞台がこの世である必要があまり感じなくなるんですね。すごく乱暴に書きましたが。悪霊がこの世にいる世界観なら、その説明は相当慎重に行ってほしいというのが、僕の勝手な願望です。
そういう意味で、悪霊の実在の取り扱いは、少し急に進んでしまってるように見えて最後まで違和感が消えなかったのが正直なところで、これが映画の主な減点になっています。例えば「祈祷師」という存在の唐突なところとかもそうですね。祈祷師が呼ばれたと思ったら、何もかも知ってる感じで話し始めたことや、それに対して全然異論出ない感じも。そういうところが原因で「あまり怖くなかった」というのも残念な点でした。
もう一つ、かなり意識的にコメディ要素が入っていると思うのですが、これ本当に必要だったんでしょうか。「漢方薬を飲んでいたから」とかはまあわかるとして、悪霊払いの儀式のシーンもかなりギャグ寄りに作られていて、あとあとの話の収束について考えると余計に不必要なものに見えてしまいました。
しかしそれ以外は、韓国映画の骨太さをいたるところで感じられて、楽しかったです。僕みたいな、基本的に合わなさを感じて2時間以上経過してしまった後でも、急展開後に『カメラ』が出てきた瞬間は「うおおおおお!!!」とテンション上がりました。怖いわけではないのだけど、ストーリーとその謎にはしっかり翻弄されたし、最後の最後までわくわくを用意してくれて、よい映画だと思います。
八木

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