朱音

哭声 コクソンの朱音のネタバレレビュー・内容・結末

哭声 コクソン(2016年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

スパイク・リー監督の「サマー・オブ・サム」のような、偏見や孤立、疑心暗鬼の連鎖が暴走し悲劇を生む、といった内容の社会派サスペンスかと思いきや、さらにとんでもなく捻くれた作品だった。

宗教的なメタファーを多分に含んでいるが、本質的には「信心」を描いている作品だと思う。
悪霊による呪い、祈祷師による除霊、土地神やらイエスを思わせる超常的存在や悪魔、はたまた毒キノコによる集団感染など、それらしい筋を裏付けるような描写をそこかしこに配し、意図的に観る者を混乱へと導くが、確とした結論には至らないという筋立てによって、私たちは自らの信じる寄る辺を失ったジョングやイサムと同様に恐怖し、絶望する。

人の生への渇望や、大切なものを守りたいという情を根こそぎ振るい落とすような状況作りや、溺れる者は藁をも掴まんとするキャラクターの哀感、いちど始まってしまった悲劇や暴力がやがて最果てへと、行きつく所まで行ってしまうナ・ホンジン節は本作でも健在で、もうここまで突き付けられたらぐうの音も出ない。
ストレートな展開でない分、監督の過去2作ほどの圧倒的な、力技のカタルシスは得られなかったが、サスペンス、コメディー、ホラー、ノワールと多面的な要素をいずれも高いクオリティで混ぜ込んでいて飽きない。
相変わらず容赦の無いバイオレンス描写もさすが。老若男女を問わず、動物も殺しまくるので苦手は人は絶対に観るのをお勧めしない。

尺の長さはちょっと気になるが、本作はその構造的にも、ナ・ホンジン監督作の中では最も繰り返し観て楽しめるタイプの作品だと思う。

キャスティングは見事で、國村準さんの存在感も素晴らしいが、何より韓国の子役すげぇ!と思った。
朱音

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