こうん

聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアのこうんのレビュー・感想・評価

3.8
ヨルゴス・ランティモス最新作「聖なる鹿殺し」(副題めんどいから省略)、前作の「ロブスター」がなかなか面白かった記憶があるので観てきました。ヨーロッパの鬼才の映画にニコールのキッドのマンが出ているということはもしやそういうことじゃないですか?…という下衆な推測に因るところも大きかったです。
(推測当たってました(^^)/)

なんてゆーか、風邪ひとつひいてないけど体調が合わなかったのか、ちょっとアレでした。

心がささくれ立っていたのかもしれません、いかにもな“鬼才”感に拒否反応というか、「神話とかメタファーとか暗喩とかアレゴリーとか寓意とかそういうの読み解くのが好きな人がハッスルしそうな映画ですねー」と意地悪な気分になって映画館を出てきました。
それはまぁ個人的なアレなのでおいといて。

“罪の代償はいかにして払うのか”という不条理劇で、ニューロティック・スリラーで、サイコホラーの趣もあって面白かったんですけど、それもこれもバリー・コーガンなる新進俳優の凄味ですね。

彼の柔和で剣呑で不気味、という個性と演技がこの映画の美点になっていると思います。
終盤には神々しくさえなっていきますからね。
「ダンケルク」で民間船で兵隊さんを助けに行く少年を演じていたとのことですけど、全然違って見えて、役者ってすごいなぁ(素)と感心しました。一時のポール・ダノやエズラ・ミラーを思い出しましたけど、逸材のクセメンです。
彼を観にいくだけでも価値のある映画だと思いますですよ。

それから懐かしいアリシア・シルバーストーン!老けたなぁ、でも好き。
「ロードショー」誌を購読していた高校生のころ、大好きでしたありがとうございましたお世話になりました。
その彼女がいい具合に爛れた感じの人妻を演じていて…たまりませんでしたね。おれもなかなかきれいな手をしていますよ。出番が少なかったのが残念です。

それからニコールのキッドのマン!
この人は俳優としてどんどん素晴らしくなっていくし、どんどん魅力的になっていくし、この人の出ている映画を永遠に見続けたいですお願いします。
あの“全身麻酔プレイ”って…身動きできない女性を凌辱するかのような、コリン・ファレル演じるスティーブンの強権性や偏執性を現わしていて面白かったですね。単なるマグロ好きってわけじゃなくて、このひと外科医だっせ!ドぐされです。

あと僕の好きなビル・キャンプさんも出ていたし(ニコールのキッドのマンに手淫させる麻酔医ね)、なかなか楽しんだのですけど、ランティモスさんの思わせぶりな演出や余白や空間が、なんか、ダメでした。
ダメというか、寓意や暗喩が込められている作風に「めんどくせっ」となってしまいましたです。

でもまぁみんながみんな利己的になっていく様はブラックで面白かったし、「どっちの子が優秀ですか?」と学校に聞きに行くコリン・ファレルがとことん最悪でサイコーでした。
もうちょっとそのブラックさ由来の滑稽味があればよかったかなーなんて思います。
語りがシリアス一辺倒すぎる気がしました。

まぁしかし今日は、本作の思わせぶりな感じが合いませんでした。
いつもなら嫌いじゃない感じの映画だったのですけどね。
まぁとにかく本作観て、キューブリックの名前は引き合いに出さないようにしようと思いました。

腋毛見せて見せて!というコーガン君、かわいいです。
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