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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアの小のレビュー・感想・評価

3.9
ヨルゴス・ランティモス監督の作品は『ロブスター』くらいしか観たことがないのだけれど、究極の状況における人間の愛憎をシニカルに描くという感じの監督なのかしら。

究極の状況を作り出すための設定が現実離れし、メタファーっぽい描写もあったりして、若干よくわからない感も残るのだけれど、主人公の行動は自分その立場だったら、やっぱりそうするかも、と思うようなリアルさがある。

主人公は心臓外科医で、郊外の豪邸で暮らし、美しい妻と賢く可愛い姉弟を持つ、外見的にはとても幸せな人生を送っている人。ところが、ある謎の少年に対し負い目がある感じ。その少年はとても良い子でありながらも不穏な雰囲気を漂わす。

そんな謎の少年の求めに応じてだったかは忘れたけれど、心臓外科医は少年を自宅に招き入れ、家族も少年に好意を抱く。しかしその後、心臓外科医の子どもたちに奇妙な出来事が起こり始め、心臓外科医はやがて究極の選択を迫られる。

子どもたちにコトが起こってからの人間ドラマが見どころで、これがナカナカ面白く、笑える小ネタも散りばめられている。特にそのコトの原因が明らかになってからは、「自分だけは」という欲望を達成しようとする心臓外科医家族の行動が様々で、クスッと冷笑気味に笑ってしまう。

そして心臓外科医の下した結論が、まあ納得なのだけれど、その方法が一番笑ったかな。映画ならではの方法かなとも思ったけれど、究極の選択を迫られた人間というのは冷静な判断ができなくなるのだ、と言われるとわかるような気がする。

謎の少年が何であるかにこだわるとモヤモヤ感が残るのだけれど、そこはメタファーで示されているような気がするし、ギリシア神話がベースだと知れば、まあそういうことなのかな、と。

●物語(50%×4.0):2.00
・究極の選択を迫られたとき、どう考え、どう行動するのか。平時にこうだと思っていても、いざその立場になると人は滑稽なものなのかもしれない、と面白く示してもらった感じ。ギリシア神話に詳しかったら、もっと面白く感じたかも。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・謎の少年役の彼、どこかで観たよな~と思って調べたら『ダンケルク』でした。良い子の言動をしながらも不穏な雰囲気を醸し出していたかと。あと、心臓外科医の家族がナイス。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・不穏な空気感は良く出ていたのではないかと。
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