LudovicoMed

新感染 ファイナル・エクスプレスのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

4.2
この映画の勝因はなんといってもこのアイデアでしょう。
ゾンビ物+ハイスピード密室というありそうでなかった題材はとても新鮮で、近年のひとひねりある「ワールドウォーz」「アイアムアヒーロー」などのゾンビ映画の分類。

だけどこのワンアイデアだけでは2時間はきつく、中だるみになったり結局は見てオチになりやすい。
しかしこの映画のすごい所はあと1工夫足して面白く、楽しませようとするサービス精神にある。
それが映画自体のテンポに繋がり素晴らしいし、特に空間の使い方が非常に上手い。
車両はもちろんのこと、エスカレーターや死角タップリの線路内、電車を追いかけるホームの限定空間、暗闇空間に電車内のトイレと挙げるときりがないくらい。
しかも本作はゾンビの設定が細かく、それがすべて空間的サスペンスのおもしろさにつながる。

例えば、暗闇と姿が見えない状態は襲ってこないという設定とトンネル、このアイデア。
これだけでむちゃくちゃ盛り上がるし、それにプラス音には反応するというだけで緊張感も高まる。
そう本作は一発斬新アイデアものに見えて実は非常に計算された娯楽主義大作。

そしてこの映画のもう一つ素晴らしい点は人物描写。
自分の欲や金に溺れてる人間はゾンビ映画のあるある悪役だけど、本作は自分のことで手一杯で他人を抜いてでも、生き抜こうとする生存本能の本質を描いている。
この描き方も新鮮でつい「自分ならどうするか」などと考えてしまい、非常にリアルな視点。
この人物描写さえも物語の展開にエッジを効かせエンタメに徹しているし感動も与える。
上映時間に退屈する暇がなく本当に素晴らしいと思う。

が、一点だけラストの主人公がああなる所が取ってつけたような感動シーンに見え安っぽいなあと感じたのが引っかかる。
でも考え方によってはゾンビ物の伝統を行ったようにも思えるし、全面否定はできないなあと思いました。
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