平野レミゼラブル

ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章の平野レミゼラブルのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

記念すべき100本目にはお気に入りの映画を。
いやこんなアイコンでお察しの通り、僕はジョジョが大好きでして、特に第四部の日常に潜む非日常の青春ジュブナイル群像劇なんて、個人的な物語の好みも相まって特に好きなんですよ。
そしてそんな中で何回も噂は聞きながら頓挫していたジョジョ実写化計画に第四部が選出!!監督に大好きな三池監督ではあったんですが、まあ正直期待半分・不安半分でもありその結果は……


グレートですよ、コイツはァ……!

割と元から期待値は高くはあったんですけど、まさかここまで贔屓目抜きにこの感想が出てくるとは思わなかった。
マジでオススメの1本となりまして、まさか自宅のアニメ四部のBDの横に実写DVDとBD両方置くことになるとは……本当実写ってだけで忌避感抱いてちゃ駄目ですよ。めっちゃ良い作品なんですから…!!

実写版は原作だと序盤の「アンジェロ&形兆兄貴戦」をミックスしてたんですけど、アンジェロの歪みの原因として親父の存在を匂わす、原作以上に仗助の爺ちゃんを掘り下げるって実写のオリジナル描写を追加させることでそれぞれ虹村家と対比させてたのが素直に巧いです……
原作の一つのテーマ際立たせるためにオリジナル描写を加える。まさに原作が実写を!実写が原作を引き立てるッ!たとえるならサイモンとガーファンクルのデュエット!ウッチャンに対するナンチャン!高森朝雄の原作に対するちばてつやの「あしたのジョー」!……つう───っ感じっスよお~~~~~。

おおむね流れとしては原作通りなんですけど、決して原作を綺麗になぞってるわけではなく、むしろ三池映画らしい荒削りになぞった部分も多めではあります。しかし仗助の優しさとか、破壊と再生とか、黄金の精神とかそういう所を大事にしてるのでディ・モールトベネです。
こういう三池監督なりに解釈された実写ジョジョが見たいって気持ちにしっかり応えてくれたのが本当に嬉しかった。まあ本当に三池監督らしい荒削りさではあるけど、減点式でも別に赤点ギリギリってわけでもなし。ただ加点式で自分でもビックリするくらい高く点数がついた。

特に好きなのが原作以上に深く掘り下げて映画の主題にしてくれた東方良平の生き様。原作だとあの爺さん、朋子さんナンパしたヤロウが過剰にボコされてもまあどっちもどっちということでとか言うアレな部分も目立ってたけど(アニメでちょっとフォローされてたね)実写だと不良への面倒見がめっちゃ良く、彼らがこの町を害することはないって信じる芯の部分がしっかりしてたのが素晴らしい。そして吉良事件にも関わりを持たせることで、仗助と吉良の因縁を強くしたのも映画ならではでして次回作をマジに期待してしまうよ俺は。
その「守れなかった町の傷」の象徴として出てくる「壊れた腕時計」の使い方が絶妙すぎまして、仗助がラストで直してつけてたシーンが本当に良いんだ…ジョジョのテーマである「受け継がれる黄金の精神」をこうも劇的に描写されただけで満足感がスゴイ。
映画オリジナルの東方家団欒シーンで、朋子さんに仗助がジョセフに似てきたって言うんですよ。それを仗助は「会ったことないんだからそんなことわかんねーよ」って返す。そして「似てきたんだとしたらこの人だよ」って爺ちゃんを指す。
黄金の精神は何もジョースター家にだけ受け継がれているわけじゃない。普通のどこの市井の人々にも当たり前に受け継がれるものであるっていう四部の主題があそこで完璧に描かれていたと感じます。リーゼントの少年だってアレは結局なんでもないただの一般人が助けてくれたってことだったし。
そうそう、仗助がハンバーグ師匠な理由も説明はされなかったんですけど、「爺ちゃんがお前は高熱を出して死に掛けた時に生かされたんだ」って言った時に誇らしげにリーゼントを整えてはいたんで、一章ではアレで十分だと思います。

また受け継がれる黄金の精神の対極であるメインヴィランのアンジェロ、虹村形兆も完璧でした。

まずはアンジェロ。元々罪状が三池監督が設定したんじゃないかってくらいにエグく親和性は高いなと思っていたのですが、残念ながらその辺りはオミット。しかし代わりにアンジェロの歪みの原因に父親の存在匂わせたのがいい感じの匂わせでグーです。特に形兆兄貴の会食で決定的な対比になったのがグーよグー。
実写アンジェロの親父からの虐待受けていたっぽい設定って、劇場で観る前に小説版の感想見たときに知ったんですけど、その時は正直どうなんだろってちょっと思ったんですよ。というのも荒木先生が「吉良が母親から虐待受けていた」って設定を考えていたけど結局没にしたって裏話があったんで。下手にアンジェロ同情できるようにするのもどうなんだろうって。
ただあくまで劇中ではアンジェロの主観で「親父が最悪」だったから殺したとしか言ってないんですよね。そして実写アンジェロは最後の最後まで責任転嫁を続けるクズだったことから、最初の親父殺しも責任転嫁の犯行だったんじゃないかとも思える感じにしたのが良い落としどころ。まあアンジェロのあの飯の食い方の汚さからしてろくな教育受けてないだろうし、親父も本当にろくでもなかったんだろうけど。こういうちょっと考察できる余地残してるのもなんか嬉しいんですよね。
そして何よりアンジェロが軽口で「お前の親父も殺してやろうか?」って尋ねることで、親父を殺すスタンド使いを探してるはずの形兆がキレてバッド・カンパニー発動したオリジナル描写が本当に光る光る。あのシーンは形兆の複雑な内面を描き切っていてお気に入りです。

そしてその虹村形兆!!キャスト発表時には演者の岡田将生の「エステ・シンデレラ帰りかな?」ってくらいのキラキライケメンぶりに不安を覚えたのですが、実際観終わってみると実写版最大のハマり役だった!なんか凄い黄金体験。
冒頭から「人との出会いは重力」「運命も重力」ってプッチ神父の名言を形冒頭から言ってて「おっ」って思ったんですけど(荒木先生が提案したとか)四部が初出の「スタンド使いは惹かれあう」に繋がるし(ラストで仗助が言及)何より岡田形兆が一部や六部の時のDIOっぽい耽美さに溢れていて雰囲気抜群で掴みはバッチリ。アンジェロの独房で弓矢を引いてた原作の形兆兄貴はそのアンバランスさが有り得ない異質さとしての恐怖を演出してたけど、実写版は岡田将生の端正な容姿と真夜中の黒マントが弓矢とマッチしていて荒木式ゴシックホラーとしての恐怖になっている。ギャップを巧く活かした素晴らしいジョジョ作品への溶け込み具合でしたね。
そして原作の大ファンだという岡田将生の演技も素晴らしい。見方によってはそれのどこが形兆なんだよって部分を、終盤の親父への感情のぶつけ方で完全な形兆兄貴へと昇華させていた。そこら辺は原作読み込んでいるが故のバランス力で、結果一部ディオの耽美さや六部の宗教感に原作の兄貴成分までドッキングしてとッ散らからないという岡田形兆という奇跡の産物に繋がっている。
あと本作だと虹村父の変質がDIOや肉の芽とか前部参照な説明省かれて「よくわからない。家族を大切にしなかった天罰だろ」で済まされてたけど、それが却って良かったです。スタンド以外の正体不明な脅威も強調されるジョジョシリーズならではで、すんなり受け入れられたというか。そこら辺は『岸辺露伴は動かない』シリーズとかで奥行きも示してくれる原作の素晴らしさもあってのことですが。

他にキャストで特筆するとしたら原作通りの声と称されたアニメ版に寄せて、普通に高木渉みたいなボイス出してたマッケンユーの億泰、本編に一切関わらないから正直一章時点ではノイズなんだけどやっぱり能登っぽい声質をしていた小松菜奈の由花子、髪型と一体化してる帽子の再現は今でもどうかと思うけど「オラオラ」の迫力がダンチな伊勢谷友介の承太郎が良かった。
コスプレ感はまああるっちゃあるけど、髪型と一体化してる帽子以外はそこまで気にならないかな。物議を醸していたスペインロケも、思いのほか杜王町だったんで正解ではないだろうか。どう見ても阿部寛をローマ人と言い張る豪腕を見せた『テルマエ・ロマエ』の逆パターンみたいな話だが。


↓特に関係ないけど実写で好きなシーン
承太郎「ハァイ、グランパ!!」


あとは『スタンド』も素晴らしかったですね。演出も無理にジョジョ立ちとか擬音を入れるのを抑えて、「背後霊」のような質感のスタンドがぶん殴ってる感じが正に理想的な実写表現。人がぶっ飛んだり、顔が変形する怪現象が急に起きる一般人から見たスタンドバトルシークエンスも面白かった。
何より実写映えするのがバッド・カンパニー!!あれはCGを使ったことでジョジョの全メディアの中でも屈指の表現になってて大興奮でしたね。単純な絵面の豪華さもだけど、蜂の巣にされた顔面はあれ蓮コラ駄目な人駄目なレベルにエグいのも容赦がなくて良い。前述のアンジェロとの会食時に能力小出しにしたのも「スゴ味」表現としてベタだけど素晴らしい。
まあ折角素晴らしいCGあるのに、バッド・カンパニーのとこのテンポどうにかならんかったのかとかの不満点もあるっちゃあるんですが、魅せ方に関してはこれしかない!って断言できます。

ラストのタイトルロール中断で映る「3位の表彰状」「ボーリングの爪切り」「サンジェルマンの袋に入った手首」も、アニオリで挿入されたサスペンス演出っぽくてすき。次回作でアイツが遂に……!って期待が募ります。ボーリングの爪切りが吉良家に既にあったことで「川尻家じゃなくてお前の趣味かよ!」って疑惑が新たについたのは笑うけど。まあカップルにバカにされてキレるくらいにはお気に入りだったっぽいしな……
あとそうそう、形兆兄貴を始末したのがシアハだった改変も「争いを嫌う吉良がわざわざ争いに首突っ込むか?」って物議醸したけど、これも次回作で説明できる改変だと思うんですよ。例えば「実写吉良は形兆の矢に射られた後天的スタンド使いだった」とかなら形兆兄貴を狙った理由も説明がつく。音石ファンには悪いけど実写で音石篇やるかというと微妙な感じだしね……
そういう意味でも僕は今でも続編を待ち望んでいるのです。きっと吉良は北村一輝だし、露伴ちゃんは菅田将暉だ……ジョセフも出てきてくれたら嬉しいけど厳しいかな……日本人キャストでも草刈正雄ならギリ行けるだろう。映画で出来なかった話や『動かない』シリーズはアマプラでドラマとして補完するんだ……!俺はそんな実写ジョジョを諦めない……諦めないぞォ……!!

超絶オススメ!!