マティス

エゴン・シーレ 死と乙女のマティスのレビュー・感想・評価

エゴン・シーレ 死と乙女(2016年製作の映画)
3.0
誠実と不誠実  

 エゴン・シーレは、芸術に対して、ひたすら誠実だった。そして、自分の芸術を実現するためには、芸術以外のことに不誠実であることを全く躊躇しなかった。彼は平気で他人の好意を踏みにじった。

「芸術に聖なる心が宿る」とは、映画の中での彼の言葉だ。彼はそう信じたから、28才の若さで亡くなったが、数多くの作品を残した。

 シーレから深く傷つけられたのに、彼のことを恨むことができないヴァリが哀しい(ヴァリは実在の人物)。「私は誰にも夢中になりません」という彼女の走り書きが残っている。言葉と裏腹に感じる強い愛が、また哀しい。

 ヴァリはわずか23歳でこの世を去ったが、100年経った今でも、ヴァリを思う人たちが世界のあちこちに確かにいることを彼女に伝えたい。

 人は亡くなって、本当に存在がなくなる人もいれば、他人の心にずっと生き続ける人もいる。
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