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太陽の下で 真実の北朝鮮の小のレビュー・感想・評価

太陽の下で 真実の北朝鮮(2015年製作の映画)
3.5
北朝鮮政府演出による「庶民の日常生活」撮影の裏側を暴いたロシア人監督のドキュメンタリー。

知られざる北朝鮮の日常生活のドキュメンタリーを撮影しようとロシア人監督が北朝鮮政府に申請すると撮影許可がおりるまで2年間。

念願かない平壌に住む8歳の女の子と模範労働者の両親の3人家族に密着するが、そこには“北朝鮮側の監督”が用意されたシナリオに基づき、細かく演技を要求する。家族、学校の友達、先生の会話はもちろんのこと、両親の職業もシナリオに基づいたもの。

こうした撮影の裏側を、ロシア人スタッフが隠し撮りし、当局による検閲を受ける前にフィルムを外部へ持ち出すなどの危険を冒し暴くことに成功。北朝鮮からの要請を受けたロシア政府が監督への非難声明と上映禁止を発表したが、韓国、アメリカ、ドイツなど20都市以上で上映された。

と書くと、凄く面白そうだけど、とても退屈。初めこそ興味本位が勝るものの、結局はヤラセの場面が延々と続くだけ。ありのままを見せようと、敢えてこのようなつくりにしたのかもしれないけど、何か起こるのではないかと思っても、何も起こらない。

そもそも北朝鮮について、こういう演出自体、さもありなんという先入観があるから、意外な感じはない。実際に見るという経験は重要だけれど、少し長すぎるのではないか、と。

最後の最後に映画らしいシーンが出てくるけれど、個人的にはいま一つ腑に落ちていない。独裁政治のもと自由がないことが、とても苦しいことのような印象を受けるのだけれど、北朝鮮の人達が本当にそう思っているのか、このシーンを見ただけでは、自分にはわからないから。

このシーンの主役は、ずっと演技を続けてきたことで、疲れてしまっただけという可能性もあるのではないだろうか。詩の朗読は、北朝鮮の思惑通りで、シーンの主役はそのことを不幸なことと思っていないのではないだろうか。

このシーンは独裁政治って嫌だなあ、と思っている自分の気持ちを強化する方向でのミスリードにならないのだろうか。考え過ぎかもしれないけれど、この映画をみただけでは、北朝鮮庶民の気持ちはわかない、と思う。

独裁政治と民主政治。どちらにしても庶民には悩みがある。独裁政治は選択の自由がないこと、民主政治は一人一人が考えなければならないこと。民主政治の価値観の自分は独裁政治は嫌だけれど、独裁政治の価値観の人が民主政治をどう思っているのか、自分には良くわからない。

この点について、最近観た映画『THE NET 網に囚われた男』参考になるかもしれない。本ドキュメンタリーを観た人は、この映画を併せて観るのがおススメかな。

ところで、私の隣に女子高校生の3人組が、前方には男子高校生の5人組がいたけど、どこかの学校の課題学習の対象映画か何かになっているのかしら?
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