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ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のneroのレビュー・感想・評価

3.0
映画でメインに描かれるのはチャーチルの首相就任からダイナモ作戦開始まで。この19日間のチャーチルの揺れ動く心理を実に丹念に描いている。

そりゃあフランス陥落直前、ドイツ機甲師団がドーバーに迫ろうという国家危機だもの。緊迫感は強烈だ。国王との会食も緊張感漂う。原題からもチャーチル個人より国家の命運の切迫した印象が強い。
嫌われ者とされるチャーチルだが、首相就任時の閣内での立ち位置や人間関係の説明はなく、海軍大臣としての実績も他者のセリフで語られるのみ。英国人には自明だろうが、日本人である自分には少々理解が難しい。

ゲーリーオールドマンのチャーチルは確かにスゴイ。正面から見据える表情の厳しさと大きく表示される日付の進行に、心拍数が高まり息苦しい緊張感が続く。ただし、正直映画として面白いかと言うと微妙ではある。カレー守備隊の隊長が仰いだ虚空を思うと胸奥が重くなる。
チャーチルは和平という名の敗北ではなく闘争を選択した。歴史にIFはないとはよく言われるが、このときが夜明け直前の暗闇(DarkestHour)であったという事実を知っている我々がこの選択を評価しても意味はないのだろう。それがもやもやする理由かもしれない。
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