昭和42年の日本。そして広島。古い昭和の映画館でみたようなポスター、ざらついた画面の色。ナレーション。
平成も押し詰まったこの年に、とんだ作品がでてきたもんだ。しかもこれが2018年度、国内の大きな映画賞にあがっているとは。
韓国映画の勢いにはまり、ぬるい邦画をディスってばかりいたわたしもこれにはガツンとやられました。
広島弁の怒号、罵声、血反吐、銃声、そして養豚場。腐乱死体だって真珠摘出だってどどーんとみせちゃうもんね。
昭和の、コンプライアンスなんかくそくらえな商業映画、法令順守なんか知ったこっちゃないっていうガミさん、そして映画の中の警察の姿勢からして、そんな気概に満ち満ちたエネルギッシュな映画。
竹ノ内豊が悪くて、江口洋介の若頭がかっこよくて、石橋蓮司が胸糞悪くて、伊吹吾郎の昭和感がすごくて。
中村獅童やピエール瀧など、脇も脇、もったいないなぁって配役だけど、場に登場しただけで血がざわつくインパクトだし。
というか、この作品にみな、出るべくした出た、っていう、ね。
「こわもてだけじゃないんです」という存在感、勢揃いって感じ。
(続編には新井浩文あたりがどこぞに…とおもっていた矢先にこんなことになってしまい)
そのなかで一番どす黒くかがやく役所広司、すごい。語彙がみつからない。放火のシーンは、戦慄するわ可笑しいわで、大変なことに。サングラスに炎が映って星飛雄馬みたいになってたよ、ガミさん(笑)
ただ、松坂桃李が、最初、現代風さわやかイケメン、きれいすぎてこれは違うだろ、と。昭和末期のサラリーマンのユニフォームはこうじゃねぇだろ、もっと肩パッドばーんのデザイナーズブランドじゃけぇ。
(広大出身のエリート公務員はちがうのかな)
しかし、後半の後半、ガミさんの死と真実に触れて、ライジングした日岡。
ガミさんが前半、徹底したクソっぷりをみせたからこそ、真実が刺さるし、己の甘さが情けなかったし、ガミさんの悲惨な最期が悲しかったし。黒ペン先生の添削ノートに、日岡と一緒に滂沱の涙を流しました。
で、ここで終わりじゃないのがまたすごい。和太鼓の音をBGMに、静かだけど強烈なトイレファイト。マイベストセレクト・トイレシーンの歴史がまた一つ塗り替えられた。江口洋介ヤバあああい、かっこいいいっ!
ラストではうっすらヒゲ生やしてた日岡、ガミさんのジッポを継いで真っ黒に堕ちた日岡が続編ではみられるのかな。
登場人物キメ画の線描風なエンドロールもかっこよくてしびれた。くーっ!こういうのに弱いのよー。
はー「男の映画」いいっす。真木よう子も頑張ってたけど、とてもじゃないけど太刀打ちできない。続編で日岡を助けるのは、真木よう子でも薬剤師さんでもなく、ピエールさんだと思うんだ、わたしは。
あとで知って驚いたのが、原作が同年代の女流作家さんってことね。原作もよんでみよーっと。
ところで、この映画をみてからというもの、役所広司が怖くてしかたない。宝くじ売り場のガミさんメインのポスターと目があって、ふとそらしちゃったよ。