八木

はじまりの街の八木のレビュー・感想・評価

はじまりの街(2016年製作の映画)
2.3
 子どもの造形がよくできていると思う。主人公のヴァレリオが、きっちり「理由なき反抗」が出せていることが、健全で特に問題のない姿に見えた。そして、一般的な中学生程度の子どもって超気持ち悪いな、という素直な感想が出てきた。僕はですね、反抗期失敗してるのかもしれんですけど、例えば『反抗するために皿を割る』みたいな映像を見ると、「そこは止めるラインじゃないかな」ってすごい気になるんですよね。ちょっと盛りすぎたのではないかな、と。もっと言えば13歳の子どもをイノセントであるとみることができない病なのかもしれません。さらにもっと言えば、ヴァレリオを見て不快だったんですよ、ずっと、エンディングまで。
 もう一つ例えば、娼婦にうっかり恋をするくだりがあるんですね。そのアプローチに、「声はかけず遠くから眺める」っていうのを延々と繰り返して、興味を誘って最終的に声をかけてもらうに至るんです。そういう、自分からリスクを取りにいかない上けど性欲はバリバリ見せつけるバランスのとれなさが気持ち悪い。そして、娼婦に「あんた私がどういう商売してるかしってるの」と聞かれ「うん」とはっきり答えてたのに、そのうえであんな行動取ることとかも。反抗期ってさ、あそこまで見事に吐いたツバ飲み込むもんなのかね。僕は超絶理屈の上で生きる人間なので、リスクを取れないなら結果を求めない、事実を受け入られそうにないなら「うん」と言わないっていう逃げ道を作るリアリティもあっていいんじゃないかと思うんですよ。ていうかそっちの方が自然じゃないの。ヴァレリオは、はっきりいってメチャクチャ気持ち悪い中学生なんですよ。すげえ不快だったわー、長い間。でも、役者も含めてそのやな感じが「とてもよく出来てる」とは思った。あとはこれを楽しめるかどうかですね。
 急に引っ越してきたその地で「父と会えない、友達もいない、毎日自転車でぐーるぐる」とイタリアの吉幾三発現かというセリフを吐いておるんですが、ヴァレリオの学園生活ってほぼ描かれてないから友達ができないことが引っ越してきたことに丸投げされるのはちょっと納得いかなかったりするのよな。その割に娼婦にストーカーみたいなアプローチする、ある種狂った距離の詰め方するしさ。すわ性犯罪者ですよコイツ。
 それからまあラストですよね。もちろん詳しくは書けないけど、「だからその経緯書けよ」とか、「ローマのほうはなんも解決しとらんがな」とか、しっとり曲流してケツまくってんじゃないよ、と思いました。僕は楽しめなかったです。
 ただ、カルラとマチューのパートはハートウォーミングで良かったです。常に不穏ではあるから、どっかで豹変してもめごとのタネになるのではと恐れてしまった。でもまあ、マチューだってちょっとやりすぎてますよね、あれ。そら捕まるやろ。
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