小

きっと、いい日が待っているの小のレビュー・感想・評価

4.2
養護施設でしつけとは名ばかりの体罰が横行していた苛酷な現実、弱者と強者の対決という見どころもあるけれど、この物語はやはり「きっと、いい日が待っている」と信じることで、辛い日々にも耐えて生きていけることを伝える映画だと思う。

1960年代後半、デンマーク・コペンハーゲンの養護施設で起きた実話がもと。貧しい労働者階級の家庭に生まれた13歳のエリックと10歳のエルマー。母親が病気で満足に働くことができず、養護施設に預けられる。

罰と厳格な規律こそが子どもたちを救うための最上の方法と信じる校長によって運営されているその施設はまるで刑務所。教師を頂点として子どもたちの中にも階層が生まれ、自分の身を守るために自分より下の階層の者をつくろうとする。

耐え難い日々の中で生き残るために人間が、とりわけ子どもたちが支えにすべき普遍的なものは「夢」。宇宙飛行士になるという夢を捨てず前向きなエルマーに、周囲の子どもたちも生きる勇気を得ていく。

施設からの脱出を試みるエリックとエルマーの兄弟に待ち受ける運命に心を痛め、強大な悪と弱小な正義の対決に怒りと悲しみがないまぜになった感情が沸き上がり、子どもたちの勝利を願わずにいられなくなる。

大人の築いた壁にどんなに跳ね返されようとも、夢が生を肯定してくれることを、現実にもとづくリアルさとフィクションとのバランスをうまくとりながら、ドラマチックに示してくれる。しんどい気持ちになるけれど、感動できる作品。

ところで疑り深い自分は、夢を持つくらいで本当に辛い日々に耐えるのかしら、と思いそうだったけれど、2016年8月に『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』を見ていたお陰で、ストンと腑に落ちた。

この映画では、ナチスの強制収容所の生き残りレオン・ズィゲル氏本人を招いて子どもたちに体験を語ってもらうシーンがある。演技指導は一切なく、台詞もつけておらず、ズィゲル氏が自らの言葉で語っている(このシーンを見るためだけでも、見る価値のある映画です)。

生徒の「生きる希望は何だったのか?」との質問に対し、ズィゲル氏は「ここで生き残ったら、女の子に自慢できるぞ、という小さな事」だったと。そして「どんな些細なことでも、生きる力となる」と。

子どもが夢中に語ることは、荒唐無稽で、非現実的で、どんなにつまらないと感じることでも、否定してはならない。それは生きるだけで精いっぱいな日々ではなくとも、大人が絶対に守らなければいけないことなのだろうと思う。

●物語(50%×4.5):2.25
・グッとくる。宇宙飛行士になる夢の生かし方が上手い。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・エルマーの宇宙服のシーン、しみる。

●映像、音、音楽(20%×3.5):0.70
・落ち着いた雰囲気の映像が好き。
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